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Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

大馬鹿者たち-試飲百景

2005-06-18 | 試飲百景
先日、ドイツワイン街道の南の外れで珍しいワイン作りをしている町シュヴァイゲンを訪れて、そこの陽当たりの良いワイン畑の斜面を歩いた。フランスとの国境にあるこの町は、小さな丘に古城が並ぶ山並みの南東の端にある。土地は、その土壌も相まって、温度が上がりやすく比重の高い葡萄ジュースが収穫されるらしい。その特徴を生かして、リースリング以外の葡萄品種も盛んに耕作されている。よって、繊細なワインは無くとも、面白いワインが見付かるかもしれない。

ここの町にあるワイン街道の凱旋門は、1936年にアルザスへと向けられて建てられて現在もバスで訪れる観光名所となっている。折からの豊作とユダヤ人ワイン商を追放したので、滞りがちなワインの消費と流通を促すためにプロパガンダとして建てられる。その年の三月には、ナチは非武装化されていたプァルツへと既に侵攻している。歴史家でもあった名門ワイン醸造所主フリードリッヒ・フォン・バッサーマンの「ドイツワイン街道」のアイデアが、こうしてナチの郡長によって実現されたと、ゲーテ・インスティテュートの説明にある。

そして、この町で飲まして貰ったワインがアルコール度17度あると聞いて呆れる。それでも飲み心地に丸みがあって強いアルコールを全く感じさせない。その感想を、小さく太った伍長のような親方に告げると、我が意を得たりと満面の笑みで喜ぶ。このようなものを作る方も飲む方も大馬鹿者である。そう言えば、ラインガウのあるワイン農家に、人を頻繁に連れて行った時期がある。安くて強くて美味かったからである。そこの親爺は、「俺はガイゼンハイム(凱旋ハイム?)の高等専門学校で学んだから」と自慢をしていた。その親爺に「もっと力強いのは無いのか」と嗾けると、「強いだけがね良いとはいえないのだが」と躊躇しながらも負けられぬとばかりに、次から次へと「強いワイン」を開けていった。当時は、実際にこちらも強いワインを求めていて、平素からカロリー摂取量も高かったので長身でもないのに体重は軽く90KGを越えていた。その親方は、昨今どんなワインを作っているのだろう?久しぶりに、運転手をつけて試飲に行ってみたいと思う今日この頃である。
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昔は良かったな

2005-06-18 | 
我が家の肉屋が明日限りで店仕舞いする。その店舗のある建物が殆んど廃墟化して、オーナーが修理出来ずに、その建物を売り払ってしまうからだ。ここに住み着いてからと言うもの15年以上も先代の肉屋から含めて、この店舗は何時も生活の中心にあった。

先代の肉屋で名物料理のザウマーゲンを買って、お土産に海外へ持ち出し、調理の仕方が分からないので時差を考えながらお店に電話して教えを請うた事があった。肉屋の奥さんは、ピープトーンがしたので、何時か娘が米国から掛けた電話を受け取った経験から海外からだとは分かったと後で語ってくれた。思いかけずに海外からザウマーゲンの調理法を聞かれてさぞかし驚いただろう。

今の肉屋が店舗を引き継いでから十年になる。肉屋の若い大将は代替の店舗が見付からないので、肉屋に勤めると言う。一人一人のお客さんは、お別れの挨拶をして今後の健闘を祈る。地元密着型の店舗が一件減れば、地すべり的に町の全ての商業活動は崩壊へと大きく傾く。今後、お年よりは毎水曜日の移動マーケットを待つしかない。若い人は、今まで以上に週末に車でスーパーで纏め買いをして、勤め帰りに郊外型新興商業地で忘れ物を買い足す。

世界は、こうして新しい歴史を刻んでいく。小さな町からは郵便局もなくなり、私たちの生活の質は下がる。公共活動は民営化されて、商業活動はグローバル化に進む。安くて質の良いものが提供されればそれでよいのだが、消費志向と言うのは必ずしも合理的とは言えない。社会は平均化して、人間的な個性は薄れていく。複雑な社会の変化は難しすぎて理解出来ない。

マクロの動きが理解出来ないと不安が募る。こうして現状維持を訴える。EU憲法への否定は、この保守志向の表出であろう。生活が変わることは仕方ない。柔軟に対応しなければならない。時の流れを感じて、昔日を懐かしむのは老人の感傷である。時の流れを止める事は誰にも出来ない。



参照:
マイスターのための葬送行進曲 [ 音 ] / 2005-04-15
BLOG 対 旧マスメディア [ 歴史・時事 ] / 2005-06-07
典型的なザウマーゲン [ 料理 ] / 2005-12-27
コメント (4)
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