Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

番外 ヘンデル 対 バッハ 

2005-06-13 | 文化一般
相継いで、バロック後期の二人の中部ドイツ人作曲家の手書き楽譜が発見された。偶然なのか、話題作りで打ち合わせたものかどうかは分からないが、バイエルンとチューリンゲンの其々ミュンヘンとヴァイマールの双方での会見合戦となった。

前者は、当地の図書館に保存されていたヘンデルのイタリアンカンタータHV97の曲<Crudel tiranno Amor>の楽譜である。比較的親しまれているヘンデルの作曲といえる。1899年に当館に寄与された芸術史学者フォン・リール氏の纏めた曲集が鑑定された結果、確認された。既に知られていたヘンデルの片腕のクリストファー・スミスの8つの楽譜に紛れて、非常に珍しい作曲家の手書きを特定するのは困難であったようだ。知られているソプラノ独唱と通奏低音付きオーボエの楽譜ではなくてチェンバロ伴奏版である。稀な作曲家本人によるレチタティーヴの書き込みというから通奏低音の研究に計り知れない意味を持つ。

後者は、バッハが当時オルガニストとして仕えていたヴァイマールの宮廷図書館火事の事後整理で見付かった。1713年と記された二面の唯一現存する自筆譜で、宗教学者Johann Anton Myliusの12節の詩に作曲した、未知の唯一存在する有節歌曲であった。直後の「狩のカンタータ」BWV208への創作過程への興味にも増して、アリアやリートへの発展の軌跡としての興味も大きい。

さて、大衆ジャーナリズムの手法を真似て、300年近くたった二人の作曲家に心ならずも競合してもらおう。演奏現場や演奏家により大きな関心と影響を与えるのは明らかに前者の発見で、音楽史家や研究家に仕事を与えるのは後者のそれに違いない。音楽産業界では、既にコンサートで取上げられる日時が決まっていたり、世界初録音されたりしており、遥かに後者のエンターテイメント価値が高い。

今月マドリッドで、ロートリンクの画家ラ・トゥールの絵画「手紙を読む聖ヒエロニスム」が見付かった。このように、古文書類のなかからや思いがけない場所からの新発見は不思議にも後を絶たない。だから研究家などが鑑定して広報して、試みる話題づくりにも、様々な思惑が垣間見えて面白い。
コメント (2)
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