Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

時計仕掛けのオイスター

2005-06-04 | テクニック
知人にぜんまい仕掛けの腕時計を集めている者がいたが、その機械趣味の一端を最近理解出来る。普段は車移動なので、腕時計をすることも無く、それを全く使っていない。それでも年数回のお出かけに、腕時計を身に着ける。その時、電池式のそれは既に針が止まっていて役に立たない。だから、貸し金庫まで行って腕時計を出してくる。ぜんまい式なので、勿論電池を買う必要は無い。

懐中時計から腕時計へと進んだのは、100年前にフランケン出身のドイツ人商人ヴィルスドルフが、ロンドンでスイス時計会社ロレックスの前身を起こしたときから始まる。当時は、羨ましがられたどころか、男がブレスレットをするということで笑いものになったようである。しかしクロノメーターとして正確さが認識された頃から状況が変わってきたようだ。その後の貝を意味する防水のオイスターや自動巻きのパーペチュアル、さらにカレンダーにガラスのルーペが付くデートジャストで一気に高級時計の地位を確立した。

そして現在、再びぜんまい時計市場が復興しているのは面白い。行きつけのイタリア料理屋などに行くと親爺が「質の良い偽物」がないかと寄って来る。中国に輸入、通関完了するスイス時計の五分の二が偽者と言う。クオーツ全盛期には、機械式などは無用と考えられていたの思い起こすと、現在の状況を予測していた者はそれ程多くは無いだろう。

宝石や金を見せようとする成金趣味や、偽者でも良いからという伊達者ぶりに較べ、精妙な職人仕事への憧憬は、商業的なイメージによる洗脳とは違う。それは、フェラーリやロールスロイスなどの超高級車への 関 心 とも較べられるかもしれない。しかしどちらかと言えば、労働集約型の製品に対する畏敬の念に産業革命以前の家内工業への郷愁が混じった気持ちと言った方が正しいだろう。それでも、身に着けることによるステータスシンボルの誇示と支配欲と言う、飼い馴らされた動物の欲求である事には相違ない。
コメント (4)
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