田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

日輪学院の怪/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-05-08 07:41:10 | Weblog
第十四章 「日輪学園」の怪

1

「あれみて」
キリコがビルを指差す。

双子ビル?
いま隼人たちが出てきたビルと同じ構造建築。
向こう側はすでに完成している。

キリコがふりかえった。
出てきたばかりのビルの上部。
まだ建築半ばだ。
屋上では、巨大なクレーンが起動している。
ビルはニョキッと天高く聳えている。
外観でわかる。
まつたく同じだ。
幅も。
高さも。
容積も。
クレーンは鉄骨をつり上げている。
鉄骨には袖看板がすでについている。
『日輪』の文字が読みとれる。
隼人たち支局の入っているビルの至近距離だ。
支局の地味なビルとは比較にならない。
巨大だ。
地下の駐車場には、工事関係の車があわたぢしく出入りしている。

キリコと隼人は移動した。
クレーンが動いてるのがみえている。
そのまま走った。
ふたりは通りにでた。
こんどこそ――はっきりと視認できた。
完成したほうのビルの正面。
日章旗を模した――。
太陽から無数の光の矢が飛び出しているシンボルマーク。
そしてさらにそのしたに黄金色に輝く六文字。
「きいたことあるな『日輪学院本校』か」

クレーンでつり上げられている。
出てきたばかりのビルの袖看板。
『日輪教総本部』

「鹿沼でバックアップしてもらったポリスの阿久津さんがいってたじゃん。
麻耶先生は日輪学院に生徒がみんな流れてしまったので。
塾をやめようと、しばらく前からいっていたって」
「そうか、直人のレポートにも日輪学院のことはのっていた」

ピ…ピ…ピ…ピ…。
信号音が速くなる。
美智子の居場所のわかる探知音が小刻みになる。
キリコと隼人は学院の正面入り口から堂々のりこんだ。
策を弄してはいられない。
一刻を争う。
この瞬間にも、美智子をさらなる危機がおそっている。 
危ない。
そう思うとふたりは夢中で学院のフロントにとびこんだ。
業務はすでに開始している。
受付嬢があわてて呼び止める。
「入学案内をいただけますか」
キリコはさりげなく聞く。
渡されたパンフレットにキリコは目を通している。
「日輪教の方ですか」
「そうよ。友だちの紹介なの」
後ろで隼人が貧乏ゆすりをしている。
「おトイレなの? お水の飲み過ぎよ。あなた」
隼人はおどけて受付嬢に会釈して奥へかけこむ。


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