田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

クノイチ48参上/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-06-01 15:38:22 | Weblog
第十八章 美智子の涙

7

「キリコだけに、霧吹きか」
王仁が嘲笑っている。

技がつうじない。
必殺の手刀もきかない。
空手チョップ。
効果なし。
なんという敵だ。
ひとの顔。
ひとの皮膚。
ひとの肉。
ひととおなじ骨でできあがっているはずだ。
骨も折れよと首筋にたたきこんだ手刀。
はねかえされる。
頸骨をくだけるはずなのに。
ブロックさえ割る手刀だ。
それがまったくムダな攻撃だと。
昼からの闘争の末に隼人は悟っているのに。

いまさらながら敵の異常さにおどろく。
スプレイを吹きかけても王仁には効果なし。
ただいたずらに体技をくりだすだけた。
これは全員鬼族か!?
ふたりはじりじりと追いつめられる。
「どうする隼人」
「このままでは、超ヤバイ」
「なにをぼそぼそいっている」
王仁はおもしろがっている。
楽しんでいる。
みずからは、包囲網のそとで。
キリコと隼人が疲れ切っていくのを楽しんでいる。
膝に敵のキックを受けてキリコがよろめいた。
隼人は目の前の敵を無視してかけつけることができない。

「キリコ!!」隼人はサケブ。
「キリコ!! アブナイ」
精悍な体型の女の子がとびこんできた。
全身黒装束だ。

「すけっとするよ」
「あっ!!! 伊賀の百子チャン」
「埼玉のB級グルメ大会のバイトで会っていらいね」
「百ちゃんの伊賀のイカ焼きおいしかった」

「バカかきさまら。命もらうぞ」

トツゼン介入してきた百子を王仁が威嚇する。

百子がピュっとく口笛を吹く。

「クノイチ48。参上」

わらわらと黒装束の少女たちが車の陰から現われた。



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