田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

ハルマゲドン イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-10-12 14:08:20 | Weblog
第八章 尾形でのハルマゲドン

「身を慎んで目を覚ましていなさい。あなたがたの敵である悪魔が、ほえたける獅子のように、だれかお食い尽そうと探し回っています」  ペテロの手紙1第五章八節
                         

1

誠の携帯が胸のポケットでふるえた。
小野田からだった。
ぜひ会いたいという。
いつになく強引だ。

「ちょうどよかった。小野田に見せたいものがある。慧くんの敵がどういうヤツか見てみないか」
「息子を死に追いやったのは、体育教師の……」
「ちがう。ちがうんだ、小野田。おまえも北小の卒業生だから例幣使街道の尾形を覚えているよな」
「わかった。これからむかう」

勝平は蛇の谷へつづく斜面のすそでバイクを止めた。
翔太がリャーシートからとびおりる。
ジイチャンといく。
バイクにのるのだといってきかなかった。

「ジイチャン。風が顔にあたってたのしかったよ」
勝平はしっかりと孫の手を握った。
林の中には霧が立ち込めていた。
温気がとどこおっていた。
深く濃密に霧となっていた。
注意しないと目前の木の枝すら見えない。
迷子になって、蛇の谷に迷い込むのをおそれて里人は近寄らない。
サンクチャリイだ。
「この霧はいつもこうなのだ」
濃い霧がの在処をあいまいにしている。
隠している。
にむやみに里人が近付くことがないように。
霧に守られていた。
は霧の底に沈み、家はほとんど朽ち果てていた。
人気はなかった。

年を重ねるとはいいものだ。
過去の思い出の重なりがどんどんふえていく。
その思いでの重なり。
記憶のひとつひとつが勝平が生きてきた証しだ。
背後で誠の4駆動のエンジンが切られた。

「これからいくところには蛇が群れをなしている。でもおれたちには害はあたえない」
「知っているよ。並バアチャンを守っていた蛇だよね」

翔太はジイチャンからなんど聞かされてきた話を覚えている。
ジイチャンがぼくの年の頃に経験した冒険のはなしだ。
運命の導くままに並バアチャンと出会った話だ。

「すごいかずだぞ」
「ぼく、怖くないよ」

勝平が60年前に並子の手をひいて越えた蛇の谷だ。
いま逆の方からの中心へと近づいている。
孫の翔太の手を握って。
蛇は敬意をあらわすように3人が歩けるだけの道を開けてくれた。
ミュウとムックも蛇にとまどいながらも追いついてくる。

「すごいね。ジイチャン。ぼくたち蛇の道をあるいているんだね。蛇に歓迎されているんだ」
「ああ、並子や貞子、鹿子ヒイバアチャンが生きてきた聖なる土地なんだぞ。ここは……」
「わかるよ。キブンがおちつくもの」


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