田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

クノイチ48バイクの響きは葬いの鐘/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-12-01 00:04:09 | Weblog
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ミイマの剣さばきをはじめて見た。
翔子にすら見切ることができない。
天平の優雅な舞い。
かと思うと、身体ごと敵にぶちあたるようにして剣をふるう。
まだ武道として完成していなしい。
実戦剣法だ。
その体技は舞いのゴトク優雅、剣技は豪快。

「翔子いくわよ。わたしは九尾軍団の武闘派。美魔。GGの仇!!」
むらがるVの群れに単身とびこんでいったて。
ミイマはなぜあれほどの剣の技をいいまで封印していたのだろうか。
玉藻の前の追討軍との戦いに遅れた。
参戦できなかった。
それを恥じた。
自らの剣を自ら封印した。
そうにちがいない。
GGを殺された恨み、玉藻さまを守りきれなかった後悔もある。
怨念の塊となってミイマは美魔となってたたかっている。
忘れられない玉藻の前への責任。
忘れられないGGへの想い。『愛』
守らなくてはならない人をふたりも失ってしまった。
そのふたつの想いが、怨念が美魔を最強のMVにしていた。

「死ね!!!」
美魔の念波攻撃をうけた。
バタバタとそれだけで凄腕であるはずのVが総崩れだ。
Vの長いナイフのような爪がチャリンという音とともに虚空にとび散る。
GGはあのながい爪で刺されたのだろう。

爆発音がとどろいていた。
はるか背後、地下街への扉があったあたりだ。
 
爆発の余韻のなかをバイクの音。
あれほどGGが待っていた、クノイチ48の単車群。

「翔子、おまたせ」
「百子、GGが――GGが」

あとは言葉にならない。
「クノイチ48。推参!!!。GGの葬い合戦だよ!!! みんないくよ!!!」
クノイチ48はだれもバイクを降りない。
騎馬武者のようにバイクが一団となって硝煙けぶる戦いの場に走りこむ。

「純。わたしたちも――」
「おう」
純の掛け声まで古典的になった。

異能部隊の火炎放射器が火を噴く。
V軍団が追いつめられていく。

翔子と純は美魔のもとにかけよった。
美魔は泣いていた。
黒髪をふりみだし、いたるところに切り傷がある。
鉤爪で刺され、斬り裂かれ、抉られた。
それがたちどころに、回復する。
そして、そのたびに美魔は若返っていく。
いまはもう翔子とかわりないほどの青春にかがやいている。
翔子が思うに、GGに美魔は合わせていたのだ。
人間であるGGが年老いていくのに。
じぶんだけいつまでも若やいでいられない。
そんな気持ちで、GGの時系列に美魔も従っていたのだ。
「ミイマ。ムリしないで」
「翔子、これは涙じゃないからね。わたしは泣いてなんかいないからね」
「わかっている。ミイマムリしないで」

純が美魔におどりかかつたVの首をはねた。
青い血が中空にとび散った。
翔子がミイマの脇を守る。
三人はじりじりと戦乱の真っただ中に進む。
 
側溝は青く流れていた。
生臭い。
流されたVの青い血であふれている。
斬り落とされたVの腕や足が折り重なって流れていく。
その速さ。
その不気味さ。
その過酷さ。
戦はいつでも残酷なものだ。

地下街が燃え上がっている。
火炎放射器の威力を見た。
火炎放射器で灰になっていくVの戦士を見た。
銃で撃ち抜かれ内臓のはみだした死体を見た。
銃で撃たれ、体が細部まで再生不能なまでの肉片となったVを見た。
いつの時代でも、いばんの悲劇は戦いだ。

極限状態でクノイチ48+100のメンバーは恐怖を忘れた。
翔子と純も恐怖を克服した。

ただ、ミイマだけがボロ泣き。

ミイマの慟哭が、こころの叫びがきこえてくる。




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