4
後ろでシャッターを切る音がする。
美智子の悲鳴のようにきこえる。
耳障りな音。
シャッターの音。
「わたしの友だち。心配ないから」
ふいに現れ、美智子をかかえて走るふたり。
警備の局のガードマンが声をかけた。
「あんたら、なにものだ」
「わたしの友だち。心配ないから」
美智子の返事だ。
意外としつかりした音声だ。
「舌先がピリッとしびれた」
「医務局へいくほうが」
局の男が言う。
「そうして」
「中山さん。だいじょうぶですか」
美智子担当の男、原村が声をかける。
地味な紺のストライプの背広をきている。
目立たないように配慮しているのだ。
「心配しないで。なんともない」
神経がぴりぴりしていた。
だれかに襲われるのではないかという不安があった。
水が舌先にぴりっときた。
それで恐怖におそわれた。
パニックを起こした。
「水はすぐに吐き出した。一滴も飲んでなかった」
それでも、医務室の椅子にすわると、
「直人。わたし こわい」
と……隼人の手を放さない。
「美智子さん。
わたしと隼人がついている。
守るから。二人で守るから。
すこしよこになったら」
キリコがおとなびたようすで美智子をいたわる。
美智子は直人と呼びかけたことに気づいていない。
それでも素直に医療用の機能つきのベッドに横になる。
すんなりとした両脚をそろえてのばす。
目を軽く閉じる。
「直人がきてくれてよかった」
気丈にふるまっている。
だが、かなり混乱してもいる。
PTSDから立ち直っているわけではなさそうだ。
いや隼人の出現が。
あらたな悩みをもたらしてしまったのかもしれない。
「水はのまなかったわ」
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美智子の悲鳴のようにきこえる。
耳障りな音。
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「わたしの友だち。心配ないから」
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美智子の返事だ。
意外としつかりした音声だ。
「舌先がピリッとしびれた」
「医務局へいくほうが」
局の男が言う。
「そうして」
「中山さん。だいじょうぶですか」
美智子担当の男、原村が声をかける。
地味な紺のストライプの背広をきている。
目立たないように配慮しているのだ。
「心配しないで。なんともない」
神経がぴりぴりしていた。
だれかに襲われるのではないかという不安があった。
水が舌先にぴりっときた。
それで恐怖におそわれた。
パニックを起こした。
「水はすぐに吐き出した。一滴も飲んでなかった」
それでも、医務室の椅子にすわると、
「直人。わたし こわい」
と……隼人の手を放さない。
「美智子さん。
わたしと隼人がついている。
守るから。二人で守るから。
すこしよこになったら」
キリコがおとなびたようすで美智子をいたわる。
美智子は直人と呼びかけたことに気づいていない。
それでも素直に医療用の機能つきのベッドに横になる。
すんなりとした両脚をそろえてのばす。
目を軽く閉じる。
「直人がきてくれてよかった」
気丈にふるまっている。
だが、かなり混乱してもいる。
PTSDから立ち直っているわけではなさそうだ。
いや隼人の出現が。
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