田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

蠅のイリュージョン/奥様はバンパイァ 麻屋与志夫

2009-11-27 07:09:52 | Weblog
奥様はバンパイァ 82

○武がとびこんでいった校舎の出入り口から。

女子生徒がみみを押さえてぞろぞろと出てくる。

両手がほほのあたりにある。

みみを押さえた顔。

ムンクの叫びの顔。

恐怖にゆがんだ顔だ。

アメリカの学園恐怖映画、題名忘れたわ。

あのときのラバーマスク。叫びの顔。

怖かった。

○玲加を肩の痛みをこらえる。

窓に顔をよせる。

「G、おかしいよ。みんな校庭をでていく」

彼女たちのめざしているのはどうやら那賀耳鼻科医院。

はやらなかった喫茶店のあとに開業したばかりの医院。

日曜大工の店Kのとなりにある。

大通りを列になって横断している。

車が進めない。

じれて警笛をブワンブワン鳴らす。

みみをおさえた女子生徒の長い列。

あわてふためいて医院にかけこんでいく。

○なににおびえているの。

どうしたの。

肩の損傷、痛みがなかったら車からとびだしたい。

彼女たちのところへかけつけたい。

ようすがわからないだけに不安はふくらむ。

顔に傷のあるようすはない。

ほほに傷の痕跡はない。

彼女たちの不可解な行動の原因がわからない。

「どうなってるのG……? 」

「たぶん……」

Gがいいかけたとき――窓にふいに武の顔が映った。

「たいへんだ。みみに蝿がはいった」

武がではなかった。武はぶじだ。

彼女たちは耳の奥で蠅の羽音がする。

と恐怖の叫びをあげていた、というのだ。

「教室でも苦しんでいる。おおぜいいた」




●私事ですが、「星の砂」に「初恋の白いバラ」を載せました。そちらもぜひお読みください。

    アイスバーグ
       

       

       

      pictured by 「猫と亭主とわたし

      


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