田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

犯人は? モーだけが知っている/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-06-19 05:58:50 | Weblog
第二十一章 悲しみの淵から立ち上がれ

3

唄子の死因が調べられている。
携帯の通話記録から最後に話した相手として、
美智子は呼びだされた。

警察では、唄子はどこかほへかで殺されたとみている。

「ヤッパ―、美智子さんがいうように隼人おかしいよ。
Nが秘めたメッセージの意味を調べる必要がありそうね」
キリコが黒い瞳をきらきらさせて隼人を見あげる。
麻取りの事務所だ。

あれほど注意深い唄子が部屋に入れた人はだれか?
あるいは……呼び出されたのか。
みんなが駈けつけたとき、唄子の部屋の鍵はあいていた。
「バンビイ」のだれかが、唄子を呼び出した可能性がある。
猫のモーが事務所にいたのだ。
唄子は猫を抱えて美智子のところから自宅にもどっていた。 
死亡場所は唄子の自宅マンションではない。
どこかほかで殺された。
自室に運ばれてきた可能性がある。
という警察からのリークがキリコたちマトリの部屋でも、はなしあわれた。
ダイイングメッセージについてはなにも発表されていない。
殺されて、運ばれたのではない。
部屋につれてころられときはまだ死んでいなかった。
睡眠薬をのまされていた。
事務所で殺されかけた。
なぜなら猫のモーが事務所にいる。
イマもいる。唄子はモーを事務所に預けた。
でもあの日にはずっとモーといつしょだった。
猫のモーがひとりで事務所にいけるはずがない。
唄子がだいていったのだろう。
そして、モーがそこにいても不思議に思わないのは。
事務所で働いている人間だけだ。
そこで、殺したかどうかはまだわからない。
社長はその時間には、香取監督とロケ地の打ち合わせをしていた。
社長のいきつけの事務所前の小料理屋『初音』の女将が証言している。
ロケ地を日光にきめるまでかなり長電話をしていた。
隼人の調べだからまちがいない。

では唄子を殺したのはだれだ。
犯人はだれだ。
確定はできないのだ。
それを追求する手立てはない。
事件はうやむやのうちに……時間だけがすぎていく。


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