田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

机司登場/吸血鬼ハンター美少女彩音

2008-07-31 22:00:47 | Weblog
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「彩音、なんだか怖い」
「わたしだって、慶子……怖いよ」
「彩音には怖いものないと思っていたのに」
 街が暗い。風も凪いでいる。
 街をいく人はマスクをしている。
 やぶれかぶれで、ノウマスクのひともいる。
 だれも赤い目をしている。
 いやらしい目でふたりの美少女をねめつけている。
 おいしそうだ。
 タベタイ。タベタイ……と目がぎらつく。
 赤くただれた目が迫ってくる。
 ふたりは走る。
 ジョークをとばす余裕などなくなっている。
 アサヤ塾まで距離が遠すぎる。
 バダっと羽音をたててコウモリがおそってくる。
 昼間なのに、薄闇がこの街の東地区をおおっているからなのだろう。
 パタパタと飛び交い彩音と慶子を狙っておそってくる。
 羽を激しく打ち合わせる。
 ギョギヨと動物のような鳴き声でおそってきた。
 鳴き騒ぎ、羽をばたつかせて、さらにコウフンする。
 皐の楔で追い払う。
 どこからわいてでたのかコウモリはいくら払っても追ってくる。
「彩音ちゃん、なに遊んでるの」
 パパラッチだ。フトッチョ洋平だ。
「洋平クン、おねがい、ジャンジャンとってぇ」
 いつもは被写体になるのをいやがる彩音の頼みだ。
 カシャカシャ洋平は薄闇の中でフラッシュをつけて写しまくる。
 コウモリは光りに弱い。
 さっと舞い上がる。鳥瞰している。
「いまよ。慶子。いっきに突破するわね」
 コウモリの排泄物の粉末化した大気のなかをふたりは、いや洋平が健気にもシャッターを切りながら追いかけてくる。
 すごくたのもしい。
 コウモリが頭上で鳴いている。
 羽をパタパタやっいるが、フラッシュの光りに目がくらんで三人には近付けないでいる。
 アサヤ塾はすぐそこだ。
 この府中橋をわたりきれば5分とかからない。
 ところが橋のむこうから吸血鬼が来る。
 みんなステロタイプではっきりとは分からない。
 でも上都賀病院での闘いの場から逃げたヤツだ。
「こんどは逃げださないの」
 けなげにも、彩音が声をかける。
「いただきますよ。いだだきますよ」
「どうしてしつっこくわたしをおそうの」
「彩音、おまえが悪いんだ」
「吸血鬼が、気安く、わたしの名前いわないでくれる」
「おまえが、いちばん邪魔になる。マッサツせよ、とマスターの命令なのでね」
「鹿沼を完全制覇するには、おまえがジャマなの」
 吸血鬼が三方から迫ってくる。
「鍵爪の攻撃から身を守ってよ」
 慶子が洋平に注意する。
「どうしたんですか。ぼくにはなにも見えません」
「洋平、なにかごようかな」
 のんびりとした声がする。
「ありがたい、司センパイ」
「おまえなあ、緊急連絡もいいけど授業中はマズイヨ。二荒高校の授業はむずかしいんだ。先生も厳しい」
「ありがとう。こんなにはやくかけつけてくれて」
「鹿中のパパラッチから携帯にエジエンシーの連絡がはいれば、なにかおもしろいものを見たければ、おいでよってことだよな。洋平にさそわれれば、ぼくでなくてもかけつけるさ」
「女子生徒のシャワーシーンでもノゾけると期待したんだろう。このスケベ」
「ほらよ。これかけてみたら」
 といってなげてよこした特殊なサングラス。
 洋平は腰をぬかした。
 見えたのだ。
 彼にも吸血鬼の存在が見えたのだ。
「ななななんなんだ。コイツラどこからわいてでたんだ」
「バァカ。そんなんじゃないよ。だいいち彩音殿のまえだ」
 こたえが、ワンポイントずれている。スケベといわれたことへの返事だ。
「ちゃんでいいわよ」
「これは、彩音殿に。二荒高剣道部主将、机司です」

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