田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

通り魔/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-06-01 07:46:10 | Weblog
通り魔


7

コマ劇場からセントラルロード。
人が群れていた。
ゲームセンターの角を過ぎた。
妖気が渦をまいていた。
だが、その妖気は純だからこそキャッチできる険悪な渦だった。
渦の中心には黒服がいた。
客引きを装って、間隔を置いてならんでいた。
もちろん客引きであるわけがない。
純がみればわかる。吸血鬼だ。
だが今宵はすこしちがっていた。動こうとはしないのだ。
なにかを待っているような、見守っているようなようすだ。
だれも気づいてはいない。
なにか起きてしまってからでは、もう遅い。
渦が静止した。
何本もの線となって流れだした。
標的を探しあてたようだ。

若者がゲーセンからフラッとでてきた。
負けたのだろう。
肩をおとしている。
不満のためにおちこんでいるのだ。

そのとき、流れの先端が男の体にふれた。
男のからだにもぐりこんでいく。

「ぼくのなかに悪魔がいて、ヤレ。ヤレ。イマここでやれ!!!」と命令した。
と逮捕されてから男は自供している。
数年前のアキバ通り連続刺殺魔事件の犯人も、同じようなことをいっていた。

かれらは真実を告白している。
だがだれもまともにはきいてくれなかった。一笑に付された。

男はチノパンツのポケットからなにかとりだした。
ダガ―ナイフだ。
秋葉原無差別殺傷事件いらい持ち歩き、所持禁止になっているはずのもろ刃のナイフだ。

ヤバイ。これはヤバイことになる。
妖気の線はピーンという金属音をかなでている。
これも純にしかきこえない音なのだ。
純はとびだそうとした。
男の行為を未然に止めることはできる。
だが妖気の渦。
いまは線となって男にもぐりこんでいくものの源流をたどることはできなくなる。
純はここで翔子に携帯をいれた。
翔子ならなにかリードできるかもしれない。
携帯を男こにむけた。
動画を翔子に発信した。
「マインドバンパイアだわ。わたしやり合った。戦った。MS.吸血鬼がルーマニアの卓球のチームと一緒に来日しているの」

いた!
いた!!
いたいたいた!!!

女といわれたから発見できたのだ。
金髪碧眼。
トップモデルにでもなれる美女だ。
卓球ではなくてテニス選手のシャラポワに似ている。
純は動いた。
かのじょに向かって動いた。
かのじょも純に気づいた。
だが男が何人ものひととすれちがった。
倒れていく。
絶叫があがる。
獣のような叫び声、悲鳴が歌舞伎町の虚空にひびく。
どちらを制止すればいいのか。
純はためらった。
どっちをとめればいいのだ。
その間、ひとがばたばたたおれていく。
黒服がまっていましたとばかり倒れたものたちを抱き起している。
傷口から血をすっている。
でも純いがいのものには、負傷者を必死で介抱しているように見える。



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