奥様はバンパイァ 88
○「人生は短すぎるが……ぼくらは亞人間だからな。どれだけ待てばいいの」
「ジョーク。ジョークだよ。武ったらマジで応えるんだから」
すっかり元気になった玲加は武とじゃれあっている。
こうなるとすっかり普通の女の子だ。
化沼高校の生徒だ。
○白いバラが咲いている。
「これがGとmimaのすきなアイスバーグ。そしてあのヘンス際に咲いているのがマ
チルダ。隣がドミニック・ロワゾ」
アイスバーグ
マチルダ
ドミニク・ロワゾー
さすが神代バラ園で育っただけのことはある。
そこへきて歴史大好き乙女の玲加だ。
それぞれのバラの名前の由来を話しだした。
武には玲加が白いバラの精のように見える。
ふたりのバラ園の散策を玲加の携帯がストップさせた。
携帯を開いて「Mからよ」と武に告げる。
「宇都宮駅。駅のコンコース。餃子小町ね。すぐみんなで行きます」
○夕飯の支度がたいへんだろうとMが宇都宮餃子館総本店にさそってくれた。
駅中の餃子小町のお店はお客があふれていた。
いつきても、宇都宮の餃子の人気はすごい。
駅東口まであるいた。
○餃子館は広い。空席があった。
○玲加たちはコンガリト狐色に焼かれた餃子にむしゃぶりつく。
「さっきあんなに稲荷ずしたべてまだはいるのかよ」
「そだちざかりの乙女ですからね」
「ニンニクのにおい嫌いじゃなかったのか」
「ああ。あの伝説ね。あれ……『まんじゅう怖い』の落語とおなじよ」
「じゃ、好きなんだ」
うんうんと肯きながら、三皿めに挑戦する玲加だった。
○「玲加が楽しそうね」
「むかしのmimaをみるようだ」
Gが目をほそめている。
「どうして……もどってきたのだ」
「人狼と和議が成立したのにね。千年ぶりで二つの種族、人狼と吸美族の争いごと
がなくなったとよろこんでいたのに」
「悪魔がこの地にいたとは想像もしなかったからな」
「それも、蝿の王。ベルゼブブよ。とても若い者たちだけでは戦えない」
「どうして蝿の王が……? この地に呼び寄せられたのかな」
「わたしの推察では、この那須野が原に。わたしたち吸美族の野ざらしとなった死
体がるいるいと重なっていたときよ。死体にウジがわき、蝿の大量発生。そしてよ
ほどわたしたちの死体がおいしかったのでしょうね」
○カミサンはさらりといってのけた。
だがGにはわかっていた。
彼女は吸血鬼としての命をこの戦いに賭けている。
必死の覚悟がそのなにげない言葉にはかくれている。
●私事ですが、「星の砂」に「初恋の白いバラ」を載せました。そちらもぜひお読みください。
あなたのポチが筆者の励みとなります。よろしく。
↓
○「人生は短すぎるが……ぼくらは亞人間だからな。どれだけ待てばいいの」
「ジョーク。ジョークだよ。武ったらマジで応えるんだから」
すっかり元気になった玲加は武とじゃれあっている。
こうなるとすっかり普通の女の子だ。
化沼高校の生徒だ。
○白いバラが咲いている。
「これがGとmimaのすきなアイスバーグ。そしてあのヘンス際に咲いているのがマ
チルダ。隣がドミニック・ロワゾ」
アイスバーグ
マチルダ
ドミニク・ロワゾー
さすが神代バラ園で育っただけのことはある。
そこへきて歴史大好き乙女の玲加だ。
それぞれのバラの名前の由来を話しだした。
武には玲加が白いバラの精のように見える。
ふたりのバラ園の散策を玲加の携帯がストップさせた。
携帯を開いて「Mからよ」と武に告げる。
「宇都宮駅。駅のコンコース。餃子小町ね。すぐみんなで行きます」
○夕飯の支度がたいへんだろうとMが宇都宮餃子館総本店にさそってくれた。
駅中の餃子小町のお店はお客があふれていた。
いつきても、宇都宮の餃子の人気はすごい。
駅東口まであるいた。
○餃子館は広い。空席があった。
○玲加たちはコンガリト狐色に焼かれた餃子にむしゃぶりつく。
「さっきあんなに稲荷ずしたべてまだはいるのかよ」
「そだちざかりの乙女ですからね」
「ニンニクのにおい嫌いじゃなかったのか」
「ああ。あの伝説ね。あれ……『まんじゅう怖い』の落語とおなじよ」
「じゃ、好きなんだ」
うんうんと肯きながら、三皿めに挑戦する玲加だった。
○「玲加が楽しそうね」
「むかしのmimaをみるようだ」
Gが目をほそめている。
「どうして……もどってきたのだ」
「人狼と和議が成立したのにね。千年ぶりで二つの種族、人狼と吸美族の争いごと
がなくなったとよろこんでいたのに」
「悪魔がこの地にいたとは想像もしなかったからな」
「それも、蝿の王。ベルゼブブよ。とても若い者たちだけでは戦えない」
「どうして蝿の王が……? この地に呼び寄せられたのかな」
「わたしの推察では、この那須野が原に。わたしたち吸美族の野ざらしとなった死
体がるいるいと重なっていたときよ。死体にウジがわき、蝿の大量発生。そしてよ
ほどわたしたちの死体がおいしかったのでしょうね」
○カミサンはさらりといってのけた。
だがGにはわかっていた。
彼女は吸血鬼としての命をこの戦いに賭けている。
必死の覚悟がそのなにげない言葉にはかくれている。
●私事ですが、「星の砂」に「初恋の白いバラ」を載せました。そちらもぜひお読みください。
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