田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

皺ありしカリン摺る手に夕日映え 麻屋与志夫

2022-10-04 03:01:52 | 俳句
10月4日 火曜日
隕石と思えば榠櫨の落下音

トタン打つ音はカリンか隕石か

トタン打つカリンの落下待ちにけり

寂し夜を破るはカリンの落下音

落ち榠櫨うち重なりて軒の脇

花梨の実うち重なりて腐りいく

カリンのみ父の拳固の硬さかな

カリンの実放つは臭気いや芳香

榠櫨の実芳香と言えし茶人あり

カリンの木実のみ残して葉は落ちて

葉は落ちて実のみ残してカリンの木

烏さえつつかぬ榠櫨の硬さかな

落日に一つ残りしカリン映え

枝たわむ重き榠櫨に耐えきれず

カリンすり水あめと混ぜ咳薬

摺りおろすカリンのにおい喉のしみ

カリン摺る皺ありし手に残り日が

皺ありしカリン摺る手に夕日映え

●のど飴を舐めようとして、ふと、効能をみた。カリンエキス配合とある。
瞬間。閃いた。母が夕暮れ時の縁側で硬いカリンの実をすりおろしていた。
あの頃の母の倍も、お陰でわたしは生きている。すりおろしたカリンに水あめを混ぜてくれた。おいかった。冬にるとお湯をそそぎ飲ませてくれた。一病息災。あまり気にしないほうがいいよ。母のやさしい言葉までも蘇った。いまは、老木は切り株となって庭の隅にある。
ああ、これは俳句というより短編小説の世界だ。いまだに優しいムードのある傑作の描かけないわたしを母が励ましてくれている。

 

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