ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

伊藤貫の真剣な雑談 - 24 ( アメリカの高官と日本の高官の違い )

2023-07-30 20:20:44 | 徒然の記

  4. 「伊藤貫の真剣な雑談 ( 第2回後半 )」 〉・・「再生産される悪夢・国際政治3学派の蹉跌」

 今回も、「ねこ庭」の先生としての話の紹介です。

  ・他の国が注意をしても全く気にしないのが、アメリカ、中国、ロシア、イスラエルだ。従って制度派のパラダイムでは、特定の国が約束を踏みにじった時、きちんとした対応ができない。

 大東亜戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、アフガン戦争、とアメリカがした戦争のほとんどに当てはまる説明です。ソ連時代にロシアがした戦争も上げると、タジキスタン内戦、チェチェン紛争、グルジア戦争、シリア内戦、中央アフリカ諸国内戦関与などがあり。現在では泥沼状態のウクライナ侵略戦争が進行中です。中国についてはチベット、モンゴル、ウイグルへの侵略、中越戦争、中印紛争があり、日本との関係では尖閣諸島への領海侵入が続いています。

 ロシアのプーチン大統領が発した「核使用の脅し」では、国連が何の対応もできない無力な国際機関だったことが、世界中の人々に知られました。氏の説明通り、制度派のパラダイムでは特定の大国が暴走したとき、何の対応もできず、今も第三次世界戦争の危機が、核戦争の併発をはらみながら世界の人々を不安にしています。

  ・1985年から1990年にかけて、アメリカ国務省の主席法律顧問だったアブラハム・ソファーという人物の面白い発言を紹介する。主席顧問と言えば、国務省の最高の法律家である。

  「1945年に国連憲章が採択され、一方的な軍事行動は国際法違反となった。」

  「しかし世界の諸国は国際法を無視し、今日まで何百回も一方的な軍事力の行使をしてきた。」

  「国連の安保理は、世界の平和を維持する機能を果たせない。」

  「国際法は、どうでも良いゴミみたいなもので、全然役に立たない。」

 面白がって紹介する話でないのに、リベラル派の制度議論の無無意味さを証明してくれる米国高官の言葉が嬉しくてならないようです。ソファー氏の言葉をさらに紹介します。

  「特にアメリカとロシアの両国は、国連に協力するよりも自分たちの言いなりになる属国を増やすことに熱心であった。」

  「アメリカとロシアは、発展途上国における非合法的な軍事力行使 ( 一方的な軍事力行使 ) により、体制転換 ( 政府転覆 ) を実行してきた。」

  「アメリカとロシアによるこうしたクーデター行為は、世界の大国は国際法に拘束される意思を持たないことを示すものであった。」

 愉快でならないという顔で、視聴者に喋りかけていますので、最後の部分を氏の話言葉で紹介します。

 「ね、分かるでしょ。アメリカの国務省の現役の高官がこう言っているのですから、これがリベラル派の制度派の議論の実態であり、限界であるということを理解して貰えばと思います。」

 政府の高官が自分の国の政策をここまで隠さずに批判するのかと、むしろアメリカの「言論の自由」の徹底ぶりに驚かされます。日本政府の高官が、政府の政策をここまで批判したことを聞いたことがありませんし、もしそんなことがあれば大騒ぎでしょう。

 一つの例として、平成20年の「田母神論文事件」が思い出されます。航空自衛隊のトップだった田母神氏は政府高官ですから、アメリカの国務省の例で考えると処罰される必要がなかったのかもしれません。「日本だけが、国際法に違反した侵略国と言われる筋合いはない。日本は、素晴らしい国だ。」と言って、時の浜田防衛大臣に罷免されたのですから、気の毒な話でした。

 なぜそうなったのかを考えますと、2つの理由しかありません。

  1. 「日本だけが間違った戦争をした悪い国だ」と東京裁判で判決を出した米国に対して、自由民主党政府が忖度した。

  2. 東京裁判史観を理屈抜きの正義として政府攻撃をする、共産党を筆頭とした反日左翼勢力への屈服

 伊藤氏の貴重な話を聞かされても、私が戻るのは、現在の日本の課題です。「国際政治の6つのパラダイム」の解説より、現在の日本の課題解決の処理方法が優先します。この二つが解決できないため、国際社会で日本が追い詰められているというのに、伊藤氏は知っていながらなぜ言及しないのかと、いつもの疑問が頭をもたげます。

 アブラハム・ソファー氏の発言を面白がっている暇があるのなら、日本に現存する「トロイの木馬」について解説したらどうなのでしょう。そうすれば楽しそうに笑顔で語る話が無くなり、もう少し真面目な雑談になる気がします。

 ・では次に、リベラル派の最後のパラダイムである「民主的平和の理論」の説明をする

 私の思いを知らない氏は、国際政治学の説明を進めようとしています。「祭りの薬売り」なのか、「本物の薬売りか」首を傾げながら私も次回へ進みます。面倒になった方は、つき合う必要がありませんのでスルーしてください。

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伊藤貫の真剣な雑談 - 23 ( 口先だけの4ヶ国 )

2023-07-30 12:46:36 | 徒然の記

  4. 「伊藤貫の真剣な雑談 ( 第2回後半 )」 〉・・「再生産される悪夢・国際政治3学派の蹉跌」

 今回は、「ねこ庭」の先生としての話の紹介です。

 ・彼らが実行したのは、いわゆる「中国寛容政策」だった。アメリカがもっともっと中国と商売し、中国がもっともっと経済成長をすれば、中国人は戦争をしなくなるだろう。

 ・中国が経済的に繁栄し、世界経済に参加していけば、中国人も民主主義、自由主義、基本的人権を受け入れる国になるであろう。中国自身も豊かになればなるほど、他国との相互依存度が高まるから、戦争などやりたがらない、平和愛好の国になるだろうと考えた。

 ・アメリカは、中国の経済成長をせっせと助けるというやり方をした。それまでは最恵国待遇を一年ごとに更新していたが、クリントン政権になると永久的に最恵国待遇を与えた。しかもWTO ( 世界貿易機構 ) に参加させ、中国が世界中で金儲けができるようにした。

 日本の保守層の人々は、中国の経済成長を助けたのは日本であり、巨額のODA援助だけでなく、経団連会長だった稲山氏が中国に建設した最新鋭の宝山製鉄所や、松下幸之助氏が作った工場施設などを語りました。私もそれをそのまま信じ、鄧小平氏の「日本熱烈歓迎」を当然のことと受け止めていました。

 しかしアメリカは、日本の何倍もの支援を政財界が一体となって実行していたのです。こういうことなら、中国政府が日本に感謝しない訳が分かります。世界第二位の経済大国と威張っていても、断トツ世界第一位のアメリカの支援に叶うはずがありません。日本を強調するだけで、アメリカに関する肝心のことを説明しないという、日本の保守層の弱点がここにあります。

 日本を愛するというのは、褒めそやすことでなく、日本の置かれた状況を客観的に伝えることです。贔屓の引き倒しの意見ばかり聞かせられる国民は、正しい判断ができなくなります。反日・左翼の人々が自分の国を酷評・否定することの逆をしているだけで、日本のためになりません。

 愛国心のない「祭の薬売り」と批判しても、伊藤氏に感謝せずにおれなくなるのは、保守言論人にも原因があります。平成29年に、「変節した学者たち」という12回のシリーズを「ねこ庭」で書きましたが、氏を褒めたり貶したりしている自分を見ると、自身が「変節する学徒」になった気がします。愉快な経験ではありませんが、伊藤貫氏がそれほど不可解な人物であるということなのか。氏の動画の紹介が簡単にやめられない理由でもあります。

 「14回シリーズの番組を見ない前から、氏に期待していない自分がいます。」

 「もしかすると、長いシリーズの中で、氏を見直す奇跡があるのかもしれない。」

 7月16日のブログで息子たちにこのように言い、戸惑っている自分を伝えましたが、同じ状況が続いているということになります。「祭りの薬売り」でなく、「本物の薬売り」の氏が発見できるのなら、これに越したことはありません。

 ・今から考えれば、中国を大きくした時どうなるかということは予測できたはずなのに、アメリカは「相互依存のパラダイム」を実行した。中国がもっと発展すれば、中国はもっとアメリカと仲良くするという、非常にお馬鹿さんなことを考えていた。

 ・だから国際政治学のパラダイムを間違えると、こういうとんでもない失敗をする。国際政治学のパラダイムというのは、単に学者がこねている屁理屈ではないことが分かる。

 愉快そうに喋っていますが、政治家の前に最初から「6つのパラダイム」があるのでなく、3000年の研究をして、失敗や成功の事例を並べながら学者が組み立てた理論です。氏の説明は後世の人間がする、「後付けの議論」のような気がします。こういう雑談を聞くとやはり氏は、「祭りの薬売り」にしか見えなくなります。

 ・中国がスーパーパワーになる手助け、資金援助、技術援助をクリントン、ブッシュ、オバマ政権がやった。彼らはこのパラダイムを信じ、実行し、そして大失敗した。

 ・で、次がリベラル派の2番目の「制度派パラダイム」で、これは国際制度、国際組織と国際法、特に国際法を重視する考え方で、国際法と国際制度を充実すれば戦争は無くなるという議論だ。

 ・経済組織の国際的な制度では、参加する国相互にメリットがあるが、軍事制度や外交組織は最終的にどの国が力を持つか、有利な立場に立つかの競争だから、制度を充実・拡充しても必ずしも成功しない。

 ・日本はそうでないかもしれないが、アメリカと中国とロシアは、本音の部分では自分の国が優位な立場に立てば他の国はどうでもいいというゼロサムゲームをずっとやってきた。

 ・こういう時に「制度派パラダイム」をやっても、うまくいかない状態が出てくる。過去70年間、世界で一番国際法を破って来た国を挙げると、アメリカと中国とロシアとイスラエルである。

 ・この4ヶ国は口先では、国際法を遵守し制度を充実させて、もっと平和な世界を作ろうと言う。言いながら平気で国際法を破って軍事力を行使し、戦争犯罪を犯し、ケロッとしている。

 なんだ、よく分っているではないかと思わせる正論です。アメリカでも同じ意見を述べているのだとしたら、氏はやはり勇気のある言論人です。学徒の心が戸惑い出したところで、丁度スペースがなくなりました。次回をすぐに続けますので、関心のある方は「ねこ庭」へ足をお運びください。

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