ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

『満州事変への道』 ( 46年前の、色褪せた反日著書 )

2018-04-07 17:27:06 | 徒然の記

 馬場伸也 ( ばんばのぶや ) 氏著『満州事変への道』(  昭和47年刊 中公新書  )を、読了。

  自分の国を大切にし愛するという思考に立つ「ねこ庭」は、著者の考えがどこに位置しているのかが常に気になります。「反日・左翼」か、「国を大切にする保守」かとの判断に基づき、ブログのほとんどを書いています。

 戦前の日本を語るため、馬場氏は二人の人物に焦点を当てています。

 田中義一元総理と幣原喜重郎元総理です。田中氏を侵略的軍国思想の持ち主として批評し、幣原氏は平和的自由主義者として評価しています。

 氏は客観的事実を述べながら、曖昧な言葉で田中氏を批判し幣原氏を褒めるので、反日の「醜さ」が目立ちません。最後まで読みますと、結局氏が言いたかったのは、「日本だけが間違った戦争をした。」という、東京裁判史観でした。

 氏の経歴を調べてみましたので、紹介します。

 ・昭和12年、京都生まれ。昭和34年同志社大学卒

 ・シカゴ大学、カリフォルニア大学に学ぶ。

 ・マッギル大学で助教授をしたのち、津田塾大学助教授

 ・国際社会学専門、日本平和学会会長、日本カナダ学会初代会長

 氏が同志社大学を卒業した昭和34年当時は、まだ日本が戦後の貧しさを引きずっていた頃です。

 外貨を政府が厳しく管理し、簡単に使わせないようにしていたため、海外へ出かけられるのは、政治家、財界人等の限られた人物でした。気軽に国外へ出られず、海外旅行は国民の憧れの夢でした。

 そういう時に大卒後の氏が、シカゴ大学やカリフォルニア大学で学べたというのは、普通の家庭ではできません。

 東京裁判史観を正しいとする氏に、米国での留学が無縁とも思われません。氏が大学を卒業した昭和34年の日本の状況を、調べてみました。

  1 月  メートル法施行、NHK教育テレビ、フジテレビ開局

  2 月  黒部トンネル開通

  3 月  千代田区に無名戦士の遺骨を安置する「千鳥ケ淵戦没者墓苑」完成

  4 月  皇太子結婚式、安保阻止国民会議第一次統一行動、東京日比谷で中央集会

  5 月  IOC総会、第18回オリンピックの開催地を東京に決定

  8 月  在日朝鮮人帰還協定・赤十字が調印( 12.14第一船出発 )

  9 月  伊勢湾台風、死者・不明5098人

   11 月   水俣病問題で漁民1500人、新日本窒素水俣工場に乱入。警官隊と衝突
      安保阻止第8次統一行動の国会請願デモ隊約2万余人、国会構内に入る

   12 月  三池争議始まる。
     ラジオ東京テレビ(現・TBS)が「兼高かおる世界の旅」を放送 

 「あとがき」を紹介すると、著者の思考が分かります。46年前の出版ですから氏の叙述そのものが色あせ、「バカなことを言いなさるな。」とたしなめたくなります。

 ・小著を執筆中に、日中国交正常化への道が急速に展開し、ついに今日、1972年9月29日、両国の国交は回復した。

 ・日本と中国に住む数億人の人々と共に、私も心から、この喜びを分かち合いたいと思う。

 ・けれども私たちは、国交が樹立されたからといって、日本の中国への侵略を忘れ去って単純に喜ぶべきでない。

 ・毛沢東主席は、田中角栄首相との会談で、喧嘩してこそ仲良くなれると、賠償も請求せず、寛大な態度を示した。

 ・そのための基礎となるのは、やはり、「平和五原則」を厳守することであると思う。

 「平和五原則」とは、

  1.  領土主権の相互尊重  2.  相互不侵略  3.  相互内政不干渉

  4.  平等互恵   5.  平和共存、の五つである。

 ・日本では、中国のいいなりになったとか、大幅に譲歩したとか、そういう意見も既に出ているが、もともと平和五原則は、すべてが国際法上の基本原則で、中国から押しつけられたものでも何でもない。

 ・日本は過去においても、この原則を遵守すべきであった。

 ・既に述べたように、幣原は常にこのことを強調してきた。

 ・破ったのは、田中義一や森恪、あるいは軍閥といった、一部の人々だけではない。世論もまた中国への内政干渉を主張し、満蒙特殊地域論を唱え、山東出兵を支持してきたのである。

  ・この度日本と中国は、この基本原則を侵害しないことを、両国共同で、世界に声明したのである。条約や共同声明は、遵守されなければならないというのも、国際法上の基本原理である。

 氏は、日本は戦前の過ちを繰り返すなと、声高く述べています。

 46年が経過した現在、中国は尖閣の領海を侵犯し、沖縄を自国の領土だと言い始めました。チベットを強引に併合し、南沙諸島では、台湾、 ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイも領有権を主張していますが、中国は相手にしません。南シナ海のほぼ全域に権利が及ぶといい、南沙諸島では人工島造成を進め、軍事拠点を建設しました。

 西沙諸島の領有権は、ベトナムとの戦いに勝利した中国が、西沙諸島全体を実効支配しています。ベトナムと台湾が領有権を主張していますが、無視しています。

 氏は平成元年に52才で亡くなっていますが、存命なら、どんな思いで中国の現在を語る説明すのでしょう。自分の国を愛することができず、敵国と一緒になり、日本を断罪する学者や文化人が、新聞とテレビに顔を出しています。

 こんな「獅子身中の虫」を退治するためにも、頑張らなくてなりません。

コメント
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