そのとんでもないジャッジとは、序盤のころ、ランナーなしで打者が打った打球は1塁ベースをよぎるファウルフェアのきわどいあたり。
しかし、しっかりとフェアだと頭の中では判断していた。
しかもその打球は1塁ベースをよぎり1塁手のグラブに入ったので、ジャッジの守備範囲は当然に1塁審判員の若手TONO岡氏。
これも頭の中では判断していた。
ところが、そんな全ての状況をしっかりと判断しているのに、打者に着いて1塁に走り始めたとき、なんと右手がファウルグラウンドに向かって上がってしまった。
その瞬間まずいと思ったが、さらにまずいと思ったのが、当然に1塁TONO岡氏は、しっかりと打球判定し、フェアグラウンドに向けて右手を出している。いわゆる私とTONO岡氏が野球拳になってしまった。
しかし私はその後、上げた右手をそのまま1塁TONO岡氏の方に延ばし、TONO岡氏のジャッジだよ、とのジェスチャーにすり替え、ごまかそうとした。
これが功を奏したのか(そんなわけない。)、あるいはチーム、各選手の目はすでに打球方向に行き、私のジャッジなどは眼中になかったのか、そのあとのTONO岡氏のアウトのコールでプレーは終了。
両チームからの、特に攻撃側からのクレームも無く、そのまま何事も無く済んでしまった。
しかし、もちろんこのとき審判控室は、やんやの大騒ぎであったのは、容易に想像がつく。
審判控室には、おか乃委員長を筆頭に、いつの間にか来ていたTAKE中中部部長、NAKA山西部部長がいた。
どうも運悪く、今日は審判の役員が静岡球場に集まり、3回戦以降の審判割り振りを検討する日だったようだ。
それに第1試合を56分で終えて、手持ち無沙汰(!?)の島田ヒラ氏が、何か話題になるジャッジはないかと、それこそ待ち構えていたところに、まさに鴨が葱をしょったプレーをご披露してしまった(!?)。
5回終了後のグラウンド整備の間の給水タイムで審判控室に入るときには、もちろん覚悟を決め、待ち構える幹部役員一同の中に入るなり、こちらから申告。
ただ、まだ試合の途中なので、各者言いたいことがあるような口元であったが、ヒラ氏のせっかくマスクを取ったから、そのままマスクをフェアグラウンドのほうに延ばせばよかったのにな~、と言われたのみで、その場は済んだ。
しかし、あとの反省会は時間がかかりそうだと、想像するにやぶさかではなかった。
こうなると、後半をいかにすばらしいジャッジで帳尻を合わせるかとも思ったが、すばらしいジャッジなど、やろうと思ってやれるものではないし、そんなツキがあれば、あんなミスジャッジはこの日は起こるはずが無い。
こうなると、あとは一生懸命さをアピールするしかない。
一生懸命やっているという演技(!?)は、何とかできそうだと、試合に集中していった。
お蔭で、後半結構行き詰る展開が各所にあったが、審判クルー4人の動きがまとまり、無難にこなし、試合終了となった。
富士宮北高校の最後の攻撃、2アウト後ではあったが2塁にランナーを置いてキャプテンが代打で出てきた。
ここは冷静になり、3年間努力してきた今、代打で出てきたキャプテンの万感の思いを感じ、打席に入るまでなるべく時間をかけてやろうと、メンバー表で名前を確認するふりをし、ゆっくりとした動作でホームベースを掃いた。
しかし、これは私自身に対する最後の試合の最後の瞬間の前の心の整理のための間合いでもあった。
プレーをかけた後、キャプテンは、好球必打を心がけ、積極的に打っていった。
しかし得点の願いもむなしく、最後はセカンドフライでゲームセット。
前回の試合で創部初勝利を納めた浜松湖東高校が2個目の勝利を手にした。
富士宮北高校も負けて悔やむというより、全力を出し切った様子で、最後ホームベースの前での整列の時には、さわやかな笑顔で湖東の勝利をたたえた様子であった。
校歌斉唱も、湖東高校部員全員が大きな声で歌い、横にいた島田MATU下氏も、こんなに揃った校歌を聞いたのは初めてだと驚いていた。
やれやれ、これで私の夏も終わったと思ったら、次の瞬間背中の向うからなんとなく私を熱く見ている、数々の視線があるのを思い出した。
まだまだ暑い夏は終わっていない・・・。
あと数十分の我慢だ頑張れと、グラウンドから審判控室に入る際、自分に言い聞かせていた。
もうこうなれば、まな板の鯉。煮ても焼いてでも何でもしてくれ、と何でも素直に聞こうと言う気持ちで反省会に臨んだ・・・。
つづく・・・。