写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

準備万全

2020年11月10日 | 季節・自然・植物

 10年前に、玄関のアプローチに少し濃い紅い花をつける花水木を1本植えた。木はまだ小さいが、数年前からたくさん花をつけ始め、通りがかりの人から「今年もきれいに咲きましたね」と声を掛けられることがたびたびあった。

 ところがどうしたことか、今年は例年の3割方しか花を咲かせることがなく、淋しい思いで眺めていた。調べてみると、成長期にある木は、木の成長に栄養をとられて花を咲かせる余裕のない年があるという。

 そんなものかなと思いながら、今日、久しぶりにこの木をじっくりと眺めて見て驚いた。高さが3mもある梢の細い先まで、小さなつぼみを無数にと言っていいほど付けているではないか。これなら来年の春は大いに期待できそうである。

 ここ数年、ハナミズキは少しずつ花を咲かせる時期が早くなっている。当初は5月の連休の頃が満開であったものが、最近では4月の25日頃となっている。ここにも地球温暖化の波が押し寄せているのではなかろうか。

 そんなハナミズキであるが、毎年花を咲かせた直後から、翌年の花を咲かせる準備を進めている。今この時期は、ちょうど花が散って半年が過ぎたところである。夏には付けた無数のつぼみは、まだ小さく固いが、冬の寒さに耐えたあと、ゆっくりと膨らんで、春には大きな花(苞)を咲かせる。

 四季咲きのバラなどとは違って、大方1年近くをかけてつぼみを育て上げて花を咲かせる。

 私なんか子供のころから、試験に対しては一夜漬け。運動会といえば準備体操なしでの全力疾走。会社に入ってからも提出しなければいけないリポートは、上司から催促を受けた日からのねじり鉢巻き。準備という言葉とは無縁に生きてきた。

 そんな人間から見ると、準備万全なハナミズキの生き方には頭が下がるばかり。この年になって、ハナミズキから真面目な生き方を見せられて我が身を反省することしきりである