ちょっとした手伝いのため、静岡県の三島に住む次男の所に10日間行って来た。用事が済んだ後、周辺を電車や車を使って見物をして回った。三島といえば伊豆半島の付け根にある。そこから南に下ることわずか10kmの所、ここもまだ伊豆半島の付け根といっていいところに、韮山がある。
今年の7月に、この地にある「韮山反射炉」が「明治日本の産業革命遺産」のひとつとして世界文化遺産に登録されたので見に行った。反射炉は、17世紀から18世紀にかけてヨーロッパで発達した金属を溶かして大砲などを鋳造するための溶解炉で、内部の天井がドーム状になった炉体部と煉瓦積みの高い煙突からなる。
石炭などを燃料として発生させた炎と熱を炉内の天井で反射、集中させることにより、鉄を溶かすことが可能な千数百度の高温を実現する。このような炎と熱を反射するしくみから「反射炉」と呼ばれる。1840年のアヘン戦争を契機に、目本では列強諸国に対抗するための軍事力の強化が大きな課題となった。
幕府においては、西洋砲術を導入し、鉄製大砲を鋳造するために必要とされたのが反射炉であった。韮山で1857年、連双2基4炉からなる韮山反射炉が完成した。反射炉の周辺には、炭置小屋や鍛冶小屋、型乾燥小屋、敷地に隣接する韮山古川から引いた水を動力として砲身をくり抜く錐台小屋、細工小屋など様々な建物があり、これらも産業革命遺産として重要な価値となっているという。
反射炉といえば、地元である長州藩には萩反射炉がある。煙突部の遺構が現存しており、韮山と同じく世界遺産の構成資産のひとつになったが、まだ見に行ってはいない。欧米では技術の進歩により、反射炉は早々に廃退し現存しているものはなく、今もその姿をとどめているものとしては日本のこの2例しかない大変貴重な文化遺産だという。
萩でも見ることのできる同種の世界遺産を、このたびは思いがけない遠いところまで行って見物して帰って来たというお話である。