写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

外敵対策

2020年10月22日 | 季節・自然・植物

 夏に日本本土で発生したアサギマダラの個体の多くは、秋になると南西諸島や台湾まで長距離を飛んで南下することが知られている。あんな小さな体で、よくも移動できるものであると感心するばかりである。
 
 このアサギマダラは、何故フジバカマの花にしか寄ってこないのか。疑問に思って調べてみた。

 アサギマダラの幼虫が食べる草は、ガガイモ科のキジョラン、カモメズルなどで、アルカロイドを含む有毒植物として知られているものである。幼虫時代に有毒物質を体内に蓄積させ、成虫になっても体内に蓄積され続けるので鳥などの捕食者に忌避される。

 成虫したアサギマダラが好むフジバカマを含むヒヨドリバナ属も、アルカロイドを含む有毒植物で、特に雄はフジバカマの花蜜からアルカロイドを取り込んで天敵から身を守るばかりでなく毒物を代謝し、性フェロモンとして分泌する。

 アサギマダラは幼虫・サナギ・成虫とどれも鮮やかな体色をしているが、これは毒を持っていることを敵に知らせる警戒色と考えられているという。

 こんな小さな生き物でも、生まれながら生き抜く術を備えている。自らの体内に他者にとっては有毒なものを蓄えて、自分の身を守っているとは驚くばかりである。

 そういえばマムシのような毒蛇なども同じ類である。そうか、生きとし生きるものみな、外敵からわが身を守る術を生まれ持って備えていることを再認識した。

 翻って見る私はどうか。体力も知力も他人より特に優れたというところもない。かくなる上は、外敵に狙われないように、笑顔を忘れず、他人には優しくをモットーに生きていくしかないようだ。そういえば現役時代「○○ちゃん」と、ちゃん呼ばわりされていたことを思い出しているが、これも外敵対策の結果だったのかもしれない。