写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

散歩の効用

2012年06月12日 | 生活・ニュース

 夕方、いつものように散歩に出かけた。今日は奥さんは用事があってお休み、私一人での散歩であった。土手の小道を早足で歩いていると、前方からウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアという白い小型犬を2匹連れてゆっくりと歩いてくる女性がいた。

 「犬を連れての散歩、いいな」と思いながら、軽い会釈をしてすれ違おうとした時「あっ、ハートリー君亡くなったそうですね」と、その女性が声をかけてきた。白っぽいハットを深くかぶった女性だが、誰なのか全く覚えがない。「えっ? ハートリーをご存じなんですか?」と問うと、何度か会って話したこともあるという。

 しばらく犬談義となった。「このワンちゃん、去年東京まで行って甲状腺の手術をやったのですよ」「東京まで行って?」「こちらではもう駄目だといわれたので…」「失礼ですがいくらかかりました?」「手術だけで30万円も」「ハートリーも、白内障で手術を…」などと言いながらしばし犬の話。

 話をしながら女性の顔を見るが、女優にしてもいいような目元ぱっちりの色白美人だ。年はアラフォーというところか。垢抜けしたなかなかの美女である。以前会ったことがあるから話しかけられたに違いないが、私にそんな覚えはない。2、3年も前のことかもしれない。

 「お家はどちらなんですか」「駅の近くです」。厚かましくもさらに質問してみた。「ご出身はどちらなんですか?」「東京です」「東京はどちらで?」「世田谷です」「世田谷の?」「阿佐ヶ谷です」。「私は三鷹に単身で2度いたことがあるんですよ。それと横浜にも」と、身上調査の後に東京談義。

 どうやら、岩国出身の人がご主人のようであった。散歩を中断して10分間も立ち話をしたろうか。話が長くなったせいか、2匹の犬は地面に横になって休んでいる。美人との話は尽きることがない。「じゃあ、また。さすが東京の人ですね。垢抜けしていて美人です」と少し照れながら言って別れた。 

 「犬も歩けば棒に当たる」とはよくいうが、「散歩に出れば美女に当たる」お話。ちょうど1年前に亡くなったハートリーは、私に散歩での違う楽しみを残してくれていた。ハートリーも私と同じ趣味だったことが今分かった。そういえばハートリー、若い女性にはよくすり寄っていたな~。