写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

あわや太陽が…

2012年06月07日 | 季節・自然・植物

 金星が太陽の前を横切る「金星の太陽面通過」と呼ばれる珍しい天体現象が、6日午前7時10分から観測された。この現象は、太陽と金星、地球が一直線上に並んだ時に見られる現象で、日本では8年前に観測されたというが、その時は知らずに過ごした。次回は105年後で、世界全体で見ても、6日が今世紀最後のチャンスだと、テレビは朝から賑やかである。

 太陽を顔だとすれば、金星は黒く小さなホクロくらいにしか見えない。太陽にかかりはじめ、6時間余りかけてゆっくりと左側から入って横切る様子を、ニュースで映していた。観察するときには先日の「金環日食」の時と同じように、日食グラスを使うか、天体望遠鏡で太陽の像をいったん板に写して見る方法などを推奨していたが、グラスを持っていなくて実物の観察とはいかなかった。

 昼食を食べながら奥さんに「今、金星が太陽の中に入っていってるぞ」というと「金星が太陽の中にめり込んでいって、どうなるの?」というではないか。「いやいや、めり込む訳じゃあなくて、地球から見て太陽の前を通り過ぎるだけのことだけどね」と小学生に対しての説明のような話をした。「それはそうよね、めり込むことなんてないわよね」と、納得したような顔をした。

 この会話、奥さんは決して冗談で言った訳ではなく、真面目に金星が太陽にめり込んでいくと思ったようだ。この会話のあとで、私は少し反省をした。「金星が太陽の中に入っていってるぞ」という表現は、普通に理解すれば確かに「金星が太陽の中にめり込む」と理解されても致し方ない。正確には「金星が太陽の前を通過している」と言うべきであったろう。

 しかし、めり込むなんてことがあるはずはない。天体のことを知っている、知らないのレベルを超えた、とてつもない発想である。かくして2012年6月6日、我が家の茶の間では、金星が太陽に激突して太陽が大爆発し、地球が最後の日を迎えるというとんでもない天体ショーが繰り広げられていたのであった。それにしても、金星が太陽にぶち当たるなんてことが起きるのであれば、もっと騒いでいますよねえ。