写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

初夏の焚き火

2012年06月06日 | 季節・自然・植物

 2か月前、生垣にしているカイヅカの枝の選定をした。切り落とした小枝の量は、リヤカー1杯分はゆうにあったが、枯れるまでそのまま庭の片隅に積んでおいた。花は散り、今は大きな葉を茂らせているハナミズキを眺めていると、葉をつけていない枯れた小枝がここかしこににあるのを見つけた。ノコギリを片手にハシゴを持ち出し、これの剪定も終えた。

 狭い庭は枯れ枝で一杯となっている。こんな光景を見ると腰を上げざるを得なくなった。裏の菜園に運び出し、昨年末に買い込んだストーブで燃やすことにした。このストーブ、鉄板製の屋外型で、高い煙突も取り付けた。何よりも、燃やす時に煙が出ない優れものである。

 木を燃やすのは、子供のころから風呂の焚きつけで腕を磨いているので簡単だ。新聞紙を3枚丸め、その上に小木を組んで火を付けると、煙突のドラフトが働いて勢いよく燃え始める。すかさず太い薪を投げ込み、これを種火にして庭の小枝を次々と燃やしていった。

 パチパチっッと木がはじける快い音を聞きながら、パラソルの下に腰かけ、しばし炎の揺らめきをぼんやりと眺めた。左に右に、小さく大きく炎が躍る。ずっと見ていても飽きることがない。何も考えることもなく、ただ無心になって見ていた。火勢が衰えると小枝をまた投入する。単純なその繰り返しを1時間も続けたころ、やっと小枝がなくなった。

 以前から、屋内に薪ストーブを置くことを何度も検討してみたが、なにぶんウサギ小屋では狭くて置くことが出来なかった。その代わりとはならないが、菜園にストーブを置いてみた。昼下がり、日陰に座って揺らめく炎を見るのも悪くない。世俗から少し離れたところで生きているような、不思議な境地で時間を過ごすことが出来た。

 突然背後から「暑いのに焚き火ですか?」の声に振り返ってみると、顔見知りの奥さん。最近、外の仕事で黒くなった顔を向け、精いっぱいの笑顔を返した。梅雨を前に、やっと庭の片づけが終わった。