写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

整理のすゝめ

2012年06月02日 | 生活・ニュース

 「『天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず』と言われている。人は生まれながら貴賎上下の差別はない。けれども賢い人と愚かな人、貧乏な人と金持ちの人、身分の高い人と低い人とある。その違いは学ぶと学ばざるとに由ってできるものなのだ」。これは、ご存じ福沢諭吉が著した「学問のすゝめ」の一文である。

 学問の差が全てであるかどうかは疑問があるところだが、学問以外の手段で小金持ちになったという出来事があった。一昨日のことである。家のリフォーム代○万円を払い込むために、財務大臣である奥さんは、秘密の場所からありとあらゆる預金通帳を引っ張り出して「この通帳から○万円、こっちの通帳から○万円」と言いながら支払う金額をかき集めていた。

 その時である。通帳の入った大きな箱の隅っこに、長い間眠っていたような、日頃目にしたことのない預金通帳が2冊あるのを見つけた。「なに?これ」。開けて見ると、十数年も前の日付で記帳は止まっている。銀行の名前を確認してみると、大手の都市銀行の名前ではあるが、その後合併などを経て今は名前も変更されている銀行だ。

 残金を見ると、おっとバカにならない金額が印字されているではないか。そういえば現役時代、社内預金や何やらで、会社から何冊か通帳を作らされたような記憶もある。その名残を大事に保管していたといえば聞こえはいいが、きちんと保管していたような自覚症状は、奥さんともども全くない。記入してある残高は、「退職後、すでに年金などにしてもらい、もう残金などはないのでは?」と思ったが、そうである確証もない。

 翌日、僅かな期待を胸に、
いそいそと広島に向かい目当ての都市銀行に出かけた。女子行員が通帳片手に、パソコンをにらみながら時間をかけて確認をしてくれる。「あっ、それぞれに額面通りの金額が残っています。合計で○万円です」というではないか。めったに整理したことのない通帳保管箱を整理した途端、図らずも思わぬ宝が舞って来て、帰りの車の中は久しぶりに仲の良い夫婦の会話をしながら帰ってきた。

 ほんのちっぽけな小金持ちにでもなるためには、学問をする前に、まずは整理整頓が大事だということを実感したお話。こんなこと、お宅にもあるかもしれません。今一度お宝探しをぜひどうぞ。そうか~、お宅はいつも整理整頓されているのですね~。