そこそこの放送作家・堀田延が、そこそこ真面目に、そこそこ冗談を交えつつ、そこそこの頻度で記す、そこそこのブログ。
人生そこそこでいいじゃない



アイデンティティー

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント


映画って不思議だ。
どんなに面白くて、出来が良くても、観客が入らない映画がある。
逆にどんなにひどい映画でも、宣伝に力を入れて話題性があって人気俳優が出ていれば、そこそこヒットする。
そこそこどころか、メガヒットすることもある。
ここ数年、ヒットした映画のリストを見ると、とくにそういう作品が目立つ気がする。

その点、テレビは残酷だ。
つまらなければ、すぐチャンネルを変えられてしまう。
プレステ2やら3やら、Wiiやらに使われてしまう。
下手すりゃ、電源を切られてしまう。
作り手の力量がそのまま視聴率になって跳ね返る。

でも、映画は違う。
勝負は、作り手の力量とは関係なく、チケット売り場ですでについている。
チケットさえ買わせてしまえば、究極のところ映画の中身なんてどうでもいい。
観客を映画館に閉じこめてしまえば、よほど短気な人間でもない限り、一応最後まで付き合ってくれるのだから。

その結果、公開当時はちっとも話題にならなかったのに、あとになってビデオやDVDで中身を認められる映画が出てくる。

古くは「ブレードランナー」がそうだった。
公開当時、映画館はガラガラだったけど、ビデオになってからカルト人気に火がついた。
あの「レイダース」(「インディ・ジョーンズ」シリーズの第1作)もそれに近いかも知れない。
公開当時は、同時期公開の超話題作「エレファントマン」に客を奪われ、決してヒットしたとは言えなかった。
僕は「エレファントマン」が満員で入れなくて、仕方なく隣の小さな劇場でやっていたB級ムードぷんぷん漂う「レイダース」を、時間つぶしに見たんだもん。
そしたら、あまりの面白さに腰を抜かした。
いやぁ、あとから思えば、「エレファントマン」が満員で入れなくてホントに良かったと思う。

そして、この「アイデンティティー」の話になる。

この映画を、僕はなんの予備知識も持たず、フラッとDVDで見て、びっくり仰天した。
なにしろ、プロットがすさまじいのだ。
最後のどんでん返しが、まぁ、圧巻なのだ。

物語はとても単純だ。
大雨で閉ざされたモーテルに、行き場を失った11人の男女が居合わせる。
そして、11人は、1人また1人と順に殺されていく。
果たして犯人は誰なのか?
……そんなありがちな話だ。
こうして書くと陳腐なスリラーにすぎない。

しかし、最後に待っているどんでん返しが、実にすごい。
「その手がまだあったのか!?」というアイディアだ。
すごすぎて、ほとんどもう「うっそーん」の世界である。
見ていない人は、ぜひ一度見て欲しい。
目からウロコが落ちるか、腹が立つか、どっちかだ。

調べてみたら、アメリカではかなりヒットした映画らしい。
しかし、日本では2003年の劇場公開当時、「アイデンティティー」の「ア」の字も聞かなかった。
当時は「踊る大捜査線 THE MOVIE 2~レインボーブリッジを封鎖せよ~」の話題で持ちきりだったから。
あの映画はいまだに実写版の邦画では、歴代興行収入ナンバーワン。
勝負はチケット売り場でついているってことが、よく分かる。

「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!」
「ヒットは映画の質で決まるんじゃない!チケット売り場で決まるんだ!」

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