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『永遠の夫』(読書メモ)

ドストエフスキー(千種堅訳)『永遠の夫』新潮文庫

比較的上流社会の独身男性ヴェリチャーニノフが、ある婦人と愛人関係になるものの捨てられ、その後、ペテルブルグで、その婦人の夫であるトルソーツキーと出会い、ひと悶着あるというストーリー。

ちなみに、「永遠の夫」とは、妻が愛人を作っても、妻に尽くす夫のこと。

ドストエフスキー作品の中では、比較的「軽め」なのだが、なぜか「読まさる(つい読んでしまう)」。

特に、トルソーツキーの性格が複雑で、「弱虫」「狡猾」「誠実」「粘着」といった要素が混ざっており、「直情」的なヴェリチャーニノフとのかけあいが、あたかも漫才のよう。

読後感も「フーム」という感じなのだが、重厚感もあるのが不思議である。

解説を読むと、病的賭博者であるドストエフスキーが金に困って書いた作品であることが判明(ちなみに、『罪と罰』も同じような動機で書いているので、ドストエススキー的には「普通」のことである)。

このような作品を「ちょちょっと」書いてしまうドストエススキー。やはり、天才である。



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『ア・ゴースト・ストーリー』(映画メモ)

『ア・ゴースト・ストーリー』(2017年、デビッド・ロウリー監督)

郊外の一軒家に住む若い夫婦。しかし、夫が交通事故で死亡し、まもなく妻はその家を出る。亡くなった夫は幽霊となって、その家に留まり、新しい住人を寂しそうに眺めるという物語。

ちなみに、亡くなった夫は、シーツを被り、目だけ穴が開いた、昔ながらのオバケの恰好なのだが、その目がとても悲しそうである。

この世に思いを残した浮遊霊は、果たして成仏できるのか?

何も言わないゴーストの目が、いろいろなことを雄弁に語りかけてくる演出はすごい。

人生のはかなさがしみじみ伝わってくる映画である。

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