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名声とつながり

『ブレイク詩集』(岩波文庫)の巻末に掲載されている「ブレイク略伝」(松島正一著)が面白かったので紹介したい。

「ウィリアム・ブレイク(William Blake, 1757-1827)は、今日ではイギリス・ロマン派の詩人・画家として知られているが、生存中は詩人・画家としての収入はほとんどなく、一介の彫版師として、また下絵かきとして生計をたてていた」(p. 321)

さらに、イギリスを出たこともなく、ロンドンの庶民として生きた人であったらしい。

ただし、芸術家としての自信はあって、詩集を出版したり、個展を開いたりしたのだが、世間からはまったく評価されなかったという。

「1817年、ブレイクは60歳になったが、彼の貧困状態は以前にもましてひどかった。彫版師としての旧式な技法は時代の流行から取り残されてしまっていたし、彼が力を注いだ著作によってはほとんど収入は得られなかった」(p. 338)

ここまで読んで、いたたまれない気持ちになったが、次の箇所で救われた。

「ブレイクの生活は金銭的には相変わらず恵まれなかったが、1824、25年頃からリネルを介してブレイクのもとに若い芸術家たち、パーマー、ジョージ・リッチモンド(1909-1896)、カルバート、フランシス・オリヴァー・フィンチ(1802-1862)らが集まってきた。子どものなかったブレイク夫妻は、若い芸術家たちに囲まれて精神的に豊かな晩年を送ることができた」(p. 339)

改めて、豊かな人生の鍵は「名声」ではなく「つながり」だな、と感じた。



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