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『水曜の朝、午前三時』(読書メモ)

蓮見圭一『水曜の朝、午前三時』新潮文庫

がんで余命いくばくもない女性が、自分の恋と罪を告白するテープを娘に贈る。その内容がこの小説である。

冒頭でとても印象に残る場面があった。主人公の四条直美が入院する病院で、ある子供が白血病で亡くなるのだが、その母親との会話である。

「「私、本当は悪い女なの。この子が生まれるまで、主人にも言えないようなことをしてきたのよ。きっと罰があたったんだわ。でも、それにしたってひどすぎるわよね」そう言うと、彼女はうなだれて涙をこぼしました。私は黙ったまま、そんな彼女を見つめていました。慰めの言葉を探していたのではありません。私はただ驚いていたのです。それというのも、自分が悪性の腫瘍に冒されていると知った時から、私も彼女とそっくり同じことを考えていたからです」(p.24)

僕はサイモン&ガーファンクルのファンなのだが、彼らの名曲「水曜の朝、午前三時」(銀行強盗をしてしまった若者が、寝ている彼女のそばで後悔している、という内容の歌)と同じタイトルがつけられた理由がよくわからなかった。しかし、読み進めるうちに、その真意がわかってくる。

本書は、『こころ』(夏目漱石)の現代版と言ってよいかもしれない。


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