goo

『よみがえる力は、どこに』(読書メモ)

城山三郎『よみがえる力は、どこに』新潮文庫

本書は、城山さんの講演録と、早くに亡くなられた奥様・容子さんに対する追想録(君のいない一日が、また始まる)、そして同じ歳の作家・吉村昭さんとの対談集から構成されている。

一番響いたのは、容子さんの追想録。以前に読んだ『そうか、もうきみはいないのか』(新潮文庫)とはまた少し違う角度から書かれていて、心に沁みた。

「容子のことを書くと出版社に約束していたせいか、彼女も、幾たびとなく、夢に出てきてくれる。「おかげで書けるよ」と思う一方で、彼女についての本を書き上げるともう夢に出てきてくれないのかなと、ふと、思いもする。なかなか、夢に現れてくれない時期もある。こればかりは、こちらがいくら強く願っても、うまくいかない。やがて、久しぶりに、彼女が夢に出てきてくれると、私は眠ったままで、「会えた…」とホッとする。笑い返したりもする。だが、夢はいつもあまりにも簡単に終わってしまい、私は焦るように目覚め、索漠たる感情に捕らわれるのだ。私はベッドに横たわったまま闇を見つめて、君のいない一日がまた始まる、と呟く」(p.139-140)

『そうか、もうきみはいないのか』を読んだ際、容子さん亡き後に生ける屍のようになってしまう様子を見て「城山さんは奥さんに依存しすぎ」と思ってしまったが、本書を読み、奥さんを想う城山さんの愛を感じた。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 暗闇に追いつ... 真の研究者 »