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『変身』(読書メモ)

フランツ・カフカ(中井正文)『変身』角川文庫

大学時代に読んだ『変身』を読み返した。

ある日起きると毒虫になっていた、というストーリーたが、なぜか身近な話でもあるような気がした。

虫になってしまった主人公・グレゴールに対し、当初は愛情を寄せていた家族だが、時間が経つにつれ「邪魔者扱い」するようになる。

特に、優しさを示してくれていた最愛の妹からののしられる場面は悲しい。

「「あれがこの家から出て行くべきだわ」と、妹が叫んだ。「それが、ただひとつの手段ですわ、お父さま。あれがグレゴールだという考え方を、まずおすてにならなくちゃいけないのよ」(p.98)

どこかでまた人間に戻ってくれないか、という希望もむなしく最悪の展開へ。

われわれ人間は、虫になってしまうことはない。しかし、ある日突然、怪我をしたり、病気になったり、鬱になったり、リストラされたり、引きこもりになってしまうことはあるのではないか。

それまでのような自由な活動ができなくなり、収入もなくなってしまうとき、家族がどのように変化していくのか。そうしたことを想像させる作品である。

不自由な状況をどのように受け入れていくのか。そこに、大きな学びがある、と思った。

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