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『誰にでも、言えなかったことがある』(読書メモ)

山崎洋子『誰にでも、言えなかったことがある』祥伝社

江戸川乱歩賞作家の山崎洋子さんの自伝。

幼いころに両親が離婚し、預けられた先で祖母が入水自殺。再び父のもとで生活するものの、父は失踪し、残された継母から精神的虐待を受けることに。

山崎さんは、なぜ大変な状況に耐えられたのか?

「ありがたいことに、現実から別世界へ逃げ込むための窓口があった。図書館である。受け付けはきれいないおねえさんだった。本を差し出すために、やさしく微笑んでくれた。少年少女文学全集や「赤毛のアン」シリーズは小学生の頃に全部読んだ。「赤毛のアン」は多くの女性達のバイブルだが、孤児が幸せになる話なので、私には特別な思い入れもあった」(p. 65-66)

「中学生になってから読み始めたのがハヤカワ・ポケット・ミステリだ。翻訳推理小説のシリーズで、アガサ・クリスティー、コナン・ドイル、エラリー・クイーン、ヴァン・ダインなど、世界的ミステリー作家の代表作が、綺羅星のごとく並んでいた」(p. 66)

虐待から逃れるために推理小説と出会った山崎さん。アルコール中毒で暴力を振るっていた父から逃れるために本の世界に入った作家、ディーン・クーンツと似ている

その後、成人してからも、離婚、再婚、夫の介護等、山崎さんの苦労が続くのだが、エピローグが胸にしみた。

「自分は愛されていないと知った子供の頃から、私は私を否定し続けて来た。もっと愛される、もっと素敵な私でないことがいやでたまらず、自分を好きになることができなかった。大人になってからも、掴めなかった人生ばかり固執し、掴んだ人生を評価してこなかった。でも、私が私を愛さなくてどうする。いまこそ、ありのままの自分を受け入れ、なかなかいいよと褒めてやりたい」(p. 224-225)

本書を書くことで人生を振り返り、自分の人生を肯定できた山崎さん。まだまだ人生は続くと思うが「おつかれさま」と声をかけたくなった。





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