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俳優道と飢餓感

俳優の岸谷五朗さんにとって、舞台が活動のベースである。

舞台は僕の俳優人生と並行にあるもので、テレビや映画の作品は、そこで培ったものを発表するために“出かける場所”。というイメージで捉えています。『ちょっと出張に行ってくるね~』という感じでね(笑)」

そういえば、シェイクスピアも舞台をベースに脚本を書く「現場の人」であった。観客との相互作用によって、自分の芸を練っていく場が舞台なのだろう。

もうひとつ、岸谷さんのインタビュー記事を読んでいて印象に残ったのが「目標」について。少し長いが引用したい。

僕は目標をもたない。これは俳優業特有のスタンスかもしれません。というのも、一見煌びやかな世界に属するように見える俳優も、裏では役作りなどに対し一人で思い悩み、苦しむ時間が多い孤独な生き物なんです。そういうふうにすべてを自分の感覚に委ねる職業であるならば、向かうべきは頭で思い描くような目標ではなく、もっと本能的な飢え。そうでなければ、撮影や舞台づくりはとても辛くて続けてはいけないと思います。俳優道を進むうえで僕が目を向けているものはただひとつ。目の前にある作品を終えたときの自分の状態にほかなりません。そのとき何に飢えているのか、それをキャッチするアンテナだけはしっかり張ろうと心に決めているんです。そうすれば、自ずと次なる道は見えてくるものでしょう」

この「目標観」にはとても共感するところがある。「俳優道」という表現のとおり、自分の決めた「道」を歩む上で最終目標というものはない。ただ、その道を追求する「情熱」や「飢餓感」を持ち続けることが大切であるように感じた。

出所:BUAISO No.60 (2014), p.45.
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