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『カントの生涯』(読書メモ)

石井郁男『カントの生涯』水曜社

やや平板な記述だが、とても読みやすく、カントがどのような一生を送ったのかを理解することができた。

イマヌエル・カントは1724年、プロイセン王国(ドイツ)の馬具職人の息子として生まれる。勤勉な父親と信仰深い母親の影響を受けながら育ち、16歳でケーニヒスベルク大学に入学する。

デカルトの『方法序説』を読んだときも感じたが、この頃の哲学者は科学者であもある。カントは、宇宙物理学も学び「星雲説」も提唱していることに驚いた。

当時の哲学は、「物事は人間の知性で理解される」と考える大陸合理主義と、「何事も自分で経験しなければ理解できない」と主張するイギリスの経験主義がぶつかり合っていたのだが、これを統一したのがカントだという。

認識は経験に始まるが、理性によって整理される」というカントの結論(p. 143)は、あたりまえのように思えるが、哲学においてコペルニクス的転回をもたらしたらしい。

なお、本書を読んで感じたのは、①勤勉さ、②信仰深さ、③言語が、カントの研究を支えていたこと。

勤勉だった父親の教えを守って「5時起床、10時就寝」の生活を貫き、母親の影響から神を深く信じ、当時の共通言語であるラテン語を徹底的に習得したことが、カントの研究成果につながっているのだ。

偉大な仕事の裏には、生活習慣、思想、基礎力が存在することがわかった。

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