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『南洲翁遺訓』(読書メモ)

西郷隆盛(猪飼隆明訳・解説)『南洲翁遺訓』角川ソフィア文庫

南洲翁とは西郷隆盛のことだが、「翁」といっても、西郷さんが亡くなったのは49歳。この本は、庄内藩士が薩摩を訪れて、西郷さんにインタビューした記録である。

本書において繰り返されるのは「敬天愛人」の考え方。

「人が踏み行う道は、常に上に天があり下に地があるように、人為が作りだしたものではなく、天によって与えられた道理を実践することであるから、天を敬うことを目的にしなければならない。天は他人も私も区別なく愛されるのであるから、われわれは自分を愛する心を持って他人をも愛することでなくてはならない」(p.115)

あなたの隣人をあなた自身のように愛せよ」というキリストの教えと驚くほど似た考え方である。

ちなみに、この本には、「天から与えられた道理」という言葉がやたらに出てくる。西郷さんは、自分の思いよりも、与えられた使命を大事にしていたことがわかる。

しかし、天から与えられた道理を実践する者には困難がつきものである。南洲翁は言う。

「天から与えられた道を実践するものには、災厄はつきものであるから、そんなとき、そのことがうまくいくかどうか、その身が生きるか死ぬかといったことなどどうでもいいことなのだ

「ことには当然のことながら、うまくいくいかないがあり、物には出来不出来があるものだ。人は自ずとそのことに心を奪われがちであるが、人が実践しようとしているのは、そのこととか物ではなく、天の道なのであるから、そこに上手下手などはなく、出来ないという人もないものなのだ」

「だから、ひたすら道を行い、道を楽しみ、もし困難や苦しいことに遭ったならば、ますますその道を実践し楽しむという心をもつがいい」(p.127)

つまり、「使命にしたがっているのなら、うまくいかなくても悩むことなく、楽しめばよい」ということだ。

この考え方は、かなり「日本人っぽくない」考え方である。

しかし、南洲翁の言葉を聞いて、少しホッした


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