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承認と創造

アメリカを代表する詩人エミリ・ディキンソンが、生きている間に発表した詩はたったの10篇である。

彼女が55歳で亡くなった後、整理ダンスの中から千を超える詩が見つかり、それらが詩集として発表されることになる。

解説によると、エミリには「認められたい」という欲求がまったくなかったわけではないようだ。32歳のころに、自分の作品を批評家ヒギンソンに送り「お忙しいとは存じますが、私の詩が生きているかどうかお教え願えないでしょうか」という手紙を出しているからだ。

しかし、エミリの詩が独特であったため、批評家の評価はかんばしくなかったらしい。彼女は次のような手紙を残している。

「もし名声が私に属するものなら、逃れることはできないでしょう。もしそうでないなら、長い日が私を追い越していくでしょう。そして私の犬でさえも、私を承認しないで見捨てるでしょう。それなら、素足の地位の方がよいのです」(p. 12-13)

その後、彼女は自分の詩を一切発表しようとせずに、自宅に引きこもって詩を書き続ける。もし32歳のときに批評家に認められていたら、エミリがアメリカを代表する詩人になることはなかったかもしれない。

認められないことが創造性を生むこともあるのだな、と感じた。

出所:『対訳ディキンソン詩集』(亀井俊介編)岩波文庫





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