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『私という小説家の作り方』(読書メモ)

大江健三郎『私という小説家の作り方』新潮文庫

タイトルがちょっとキザなので読むのをためらっていた本。

しかし、読んでみるとその深さに驚かされた。本書は大江健三郎が小説を書くときの方法論である。

大江さんはどのように小説を書いているのか?

早くして小説家になった大江さんは、自分で自分を鍛えていくしかなかった。そこでとった方法が、手本となる詩人や小説家を選び、3,4年はその人の作品と研究書を読みまくり、そこで学んだことを小説の軸にしていくというもの。いわば、偉大なる先人を「ロールモデル」「コーチ」としながら作品を書いていくのである。ダンサー&振付師であるトゥイラ・サープがいう「インビジブル・メンター」である。

こうした方法をとるようになったきっかけは大学の恩師である渡辺一夫教授のアドバイス。

「きみは自分の仕方で生きてゆかねばなりません。小説をどのように書いてゆくかは僕にはわかりませんが、ある詩人、作家、思想家を相手に、三年ほどずつ読むということをすれば、その時どきの関心による読書とは別に、生涯続けられるし、すくなくとも生きてゆく上で退屈しないでしょう!」(p.103)

「それからの私の人生の原則は、この先生の言葉だった。三年ごとに対象を定めて読むということを生活の柱とする。それは私を若い年齢でマスコミに出たことからの頽廃から救い出してくれたし、その読書から次の小説への頼りになる呼びかけも聞こえてきたのである」(p.103-104)

偉大な先人を「インビジブル・メンター」とすることの大切さがわかった。

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