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『みをつくし料理帖』(読書メモ)

高田郁『みをつくし料理帖』シリーズ(ハルキ文庫)

知り合いの編集者の方から薦められた本である。

はじめは、「料理帖?」「なにそれ?つまらなそう」と思い、まったく読む気がしなかった。しばらくして、その編集者の方が「じゃあ、まず高田郁のデビュー作『出世花』を読んでください」と言うので、しかたなく読んだところ、それが面白かった。

そして、昨年末から「みおつくし料理帖」シリーズを読み始めたのだが、すっかりはまってしまった。今6巻目を読んでいるところである。

舞台は江戸中期。大阪の淀川洪水で両親をなくした(みお)は、大きな料理屋のおかみさんに拾われ、そこで奉公するうちに料理人となる。

あるとき、その料理屋が火事で焼けてしまい、江戸支店を任せていた息子も行方不明になったため、主人夫婦とともに江戸に出てきた澪。その後、主人は病死し、奥さんは病気になってしまう。そして、おかみさんと長屋住まいをしていた澪は、ある小さな料理屋の料理人となる。その店を舞台に、料理人としての澪が成長する姿を描いたのがこの小説だ。

と、出だしは、やや無理のある展開なのだが、これがまた、なんというか、不思議な味のある小説なのだ。

講談調のわざとらしいストーリー展開だったりするのに、妙な清潔感や透明感があり、人間としての成長や生き方について考えさせられる。「女性版・山本周五郎」ともいえるけど、ちょっと違う気もする。とにかく「心にしみる」小説なのである。

一つ気付いたのは、登場人物のキャラクターがとても魅力的であるという点だ。著者の高田さんは、漫画の原作者をされていたらしく、そうした経歴が関係しているのかもしれない。

言葉で説明することが難しいので、とにかく読んでもらうしかない小説である。


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