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愛しながら戦う

『うらおもて人生録』(新潮文庫)において色川さんは、「生きていく上での原理原則」について述べている。

「俺に書けることは、技術だ。どのコースを行こうと必要になる基本的セオリーだ。まァそう思ったんだね。それで記しはじめてみると、どうもそういかないんだ。姿勢の問題と、技術の問題は、ジャンルがちがうのだけれども、遠くの方に行くと、天と地がつながっている一線があるんだね。技術だけを別の皿で出すわけにはいかないんだな」(p.217)

では、その姿勢の問題とは何か?

それは「人を好きになる」「人から愛される」ということであるという。

「小さいところでは技術は技術そのものでしかないんだが、大きな技術になると、天と地が遠くでむすびつくように、結局、どれだけ人を好きになれるかということが問題になってくるんだな」「俺は宗教家じゃないから、愛が万能なんていわない。そんないいかたは大きらいだ。けれども、愛が下敷きになっていないとね。本当だよ。人と人とはどうしても争わなければならないんだけれどね。愛しながら、たたかいのしのぎができるかどうか」(p.218)

愛しながら戦う。とても難しいが、魅力的な考え方である。
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