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『トニオ・グレエゲル』(読書メモ)

トオマス・マン(実吉捷郎訳)『トニオ・グレエゲル』岩波文庫

本書は「トーマス・マンの若き日の自画像」を記した小説らしい。

詩を愛するトニオ・グレエゲルは、少年時代、クラスの人気者男子ハンスと、普通に魅力的な女子インゲボルグにあこがれていた。

その後、芸術家(詩人)して一目置かれる存在になったトニオは、芸術家ぶって一般大衆をバカにするような発言をするようになる。しかし、旅先で偶然、ハンスとインゲボルグに出会った際、自分の中に、芸術家的な要素と、俗人的な要素が混在していることに気づく。

なぜトニオには二つの世界があるのか?

それは、父母の影響である。

「僕の父は、御承知でしょうが、北方的な気質の人でした。観照的で徹底的で、清教主義から几帳面で、憂鬱に傾いていたのです。母は漠然と外国的な血があって、美しく官能的で無邪気で、投げやりであると同時に情熱的で、また衝動的なだらしなさを持っていました。これはまったく疑いもなく異常な可能性と、そして異常な危険とを宿した一つの混合だったのです」(p.123)

この箇所を読み、人格は「血の影響」を強く受けて決まることを改めて感じた。
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