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魂からのほとばしり

『押絵の奇蹟』(夢野久作、角川文庫)の解説には、次のような記述がある。

「夢野久作と訊かれて、福岡在住のふう変わりな作風の探偵作家と答えられれば、まず相当な推理小説の読者といえよう。彼の執筆期間はわずか十年ちょっとで、しかも郷里の福岡から生涯離れなかった。(中略)彼こそは自分の書きたいものを、書きたいままに書いた稀有な作家であった。だから筆一本で生計をたてるようになっても、中央文壇へうって出たい気持ちを決して起こさなかった。彼の書きたいものを載せてくれるところがあれば「九州日報」でも「新青年」でもよかった。探偵作家と見られようが、そんなレッテルはお構いなしに探偵小説に拘泥しなかった。彼の土着性と戦慄と狂気の文学は、魂からほとばしったものがたまたま文字に遺されたにすぎない。そして没後三十余年、ようやく彼の作品の再評価の機運が齎(もたら)されたのである」(p.332-333)

これを読み、世間の評価は気にせずに、魂からほとばしるような仕事がしてみたい、と思った。

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