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生きるために書く

黒澤映画の脚本を担当していた橋本忍さんは、平成6年前後から体調を崩し、13年間仕事を中断せざるを得なかったという。その後、3年をかけて『複眼の映像』を書き上げたときの状況を次のように述べている。

「しかし、完成などは覚つかず、途中で死による挫折と半分は諦めていたのに、意外に現実はそうではなく…長年字を書き続けてきた職人仕事の習性なのか、字を書くことで気持ちに張りが出てきて、体調までいくらか整う、思いがけない現実があったからである。とすると、これからも生きるためには字を書かないといけない」(p.4)

「生きるために書く」という言葉が刺さった。

人は、生きることを支える何かを持っているのだろうな、と思った。

出所:橋本忍(脚本)『私は貝になりたい』朝日文庫



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