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『鬼龍院花子の生涯』(読書メモ)

宮尾登美子『鬼龍院花子の生涯』中公文庫

本屋で『鬼龍院花子の生涯』を見かけたとき、夏目雅子が主演した映画のセリフ「なめたらいかんぜよ!」を思い出したので買ってみた(ただ、このセリフはどこにも書いてなかったが…)

ちなみに、夏目さんが演じたのは鬼龍院花子ではなく、鬼龍院政五郎の養女・松恵。本書は、この松恵から見た「鬼龍院一家盛衰の物語」である。

本書を読んで強く思ったのは「環境」に流される人と流されない人の違い。

高知の侠客・鬼龍院政五郎の娘・花子は甘やかされて育ったため主体性を持つことなく大人になる。一時は隆盛を誇った鬼龍院一家も政五郎が衰えるにつれて没落していき、その運命にあらがうこともなく、花子も落ちるところまで落ちてしまう。

一方、12歳のときに無理やり養女にさせれた松恵は、横虐非道な政五郎の仕打ちに耐えながら、自分を見失わずに生きていく。手籠めにされそうなところを危うく逃れ、女学校を卒業して教師になるものの、騒動を起こした政五郎のために辞めさせられる。さらに、夫を戦争で失うが、再び別の学校で学び、洋裁の教師になる。

きびしい環境に置かれても、姿勢の違いによって運命は変わることを感じさせる内容であった。

ただし、生まれたときから甘やかされてきた花子と、養女とはいえお手伝いさん的な存在だった松恵では、少し状況が違う。その意味では「育てられ方」というものは怖い。

花子は、負の呪縛からどのように逃れたらよかったのか。この点を深く考えさせられた。

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