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拒否反応

以前紹介した『オーケストラの職人たち』のなかで、著者の岩城宏之さんは、次のように語っていた。

「音楽は依然として、いつでも大好きだ。音の出るものは、浪花節から演歌、ポップス、ジャズ、ロックに至るまで、全部好きだ。特にクラシックはイノチである。だがとても悲しいのは、クラシック音楽に対するぼくの身体の反応が、昔とまったく変わってしまったことだ。正直いうと、クラシック音楽を楽しめなくなったのだ。もちろん仕事をしている最中や、新しいスコアを勉強しているときは、われながら感心するほど、夢中である。好きで好きでたまらない。プロとしてメシを食っているのだから、当たり前だ。しかし、ホテルのロビーやレストランでクラシック音楽が聞こえてくると、途端にダメになってしまう。身体が拒否反応をおこす。行きつけの店だと頼み込んで、クラシック音楽以外に変えてもらうが、いつもそうはいかない。我慢、ガマンである。」(p.97-98)

岩城さんの気持ちは非常によくわかる。実は、僕は経営学を研究しているが、仕事外の時間では、経営のケの字も見たくない。家に帰ってビールを飲んでいるときに、ビジネス関連のニュースなどをやっているとチャンネルを変えてしまう。

仕事のときには「こんなに面白いことがあるのか」と思うほど集中するが、オフになるとダメである。アレルギーに近い反応を示してしまう。良いことなのか悪いことなのかわからないけれども、同じ感覚を持っている人がいると知って少し安心した。
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