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『光るあるうち光の中を歩め』(読書メモ)

トルストイ(原久一郎訳)『光るあるうち光の中を歩め』新潮文庫

この題名は聖書にある「暗闇に追いつかれないように、光のあるうちに歩きなさい」(ヨハネによる福音書12章35節)という一節からとられている。

本書の中身は、文庫本の裏表紙に書かれている次の文章に集約される。

「欲望や野心、功名心などの渦巻く俗世間にどっぷりつかっている豪商ユリウスと、古代キリスト教の世界に生きるパンフィリウス。ユリウスは何度かキリスト教の世界に走ろうと志しながらも、そのたびに俗世間に舞いもどるが、しかし、長い魂の彷徨の末についに神の道に入る。」

一番心に残ったのは、本書の最後。信仰の世界に入ろうかどうか迷うユリウスが謎の老人に出会う場面。老人は言う。

「あんたは倍も、十倍も、百倍も、余分にやったにちがいないと言うだろう。しかし、もしあんたがすべてのひとびとより何億倍も多くなしとげたにせよ、神の仕事全体からみれば、それは何でもありはしない。取るに足りぬ大海の一滴じゃ。神の仕事は、神それ自身のように宏大無辺際じゃ。神の仕事はあんたの内部にありますのじゃ。あんたは神のもとへ行って、労働者でなく、神の息子になりなさい。それであんたは限りない神とその仕事に参加する人間となるだろう。神のもとには大きいも小さいものもありはしませぬ、また人生において大きいものも小さいものもなく、存在するものは、ただまっすぐなものと曲がったものばかりじゃ。」(p.146-147)

これを読んで、大きい仕事ができなくてもいいから、まっすぐな仕事をしたいと思った。

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