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『死ぬ瞬間』(読書メモ)

エリザベス・キューブラー・ロス(鈴木晶訳)『死ぬ瞬間:死とその過程について』中公文庫

ターミナルケア(末期医療)の分野で有名な本だが、読むまでに長い時間がかかった。内容がへビーなため、通勤の途中で少しずつ読んだからである。

出版されたのは1969年。40年以上たった今も読み継がれている名著だ。

私たちは必ず死ぬが、「死」について語ることを避ける傾向にある。それは、日々、死を見ながら働いている医療人も同じらしい。

著者は、死に直面した200人以上の患者へインタビューを行い、あることを発見した。それは、人が死を自覚してから亡くなるまでの間に、次の5つの段階を踏む、ということである。

1)否認
2)怒り
3)取り引き
4)抑鬱
5)受容


まず、不治の病であると告知されると「そんなはずはない」と信じようとしない。次に「なぜ自分なのか?」と自分以外の人間や神に怒りを覚える。その後、「良いことを行うから治してほしい」と神と取引をする。そして、抑鬱状態を経て、死を受け入れる。

なお、この五つのステップを踏む間、ほぼすべての患者が「希望」を持ち続けるという。何の希望か?それは、新しい薬が開発される希望、奇跡が起こる希望、「実は自分の検査結果が実は他人のものだった」という希望である。

この希望があるからこそ、人は死の恐怖に耐えることができる。

本書を読んで感じたことは、死について患者とオープンに話し合い、患者の気持ちを聞くこと自体が、心に平安をもたらす効果があるということ。

この本の中には、死に直面した患者との対話が多数収録されているが、彼らの声が最も雄弁に「死と生」について語ってくれる。
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