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ラーニング・ラボ

松尾睦のブログです。書籍、映画ならびに聖書の言葉などについて書いています。

ジョブ型正社員

2019年03月12日 | 組織・職場の学習
慶應義塾大学の鶴光太郎先生は、「無限定正社員システム」をやめて「ジョブ型正社員」を雇用のデフォルトにすることを提唱している。

無限定正社員とは、職務、勤務地、労働時間に一切の限定がいない正社員であり、従来の日本企業を支えてきた雇用形態である。

しかし、残業が無限定で転勤も断れないため、ワークライフバランスは崩れ、女性の活躍が遅れ、専門性が確立されたないため転職しにくくなるという悪循環の源になっているという。

これに対し、ジョブ型正社員は、職務、勤務地、労働時間のいずれか(あるいは複数)が限定された正社員であり、こ雇用形態を標準とすることで、子育てや介護と仕事の両立を可能にし、専門性が高まるため転職マーケットが活性化される。

この提案の中で注目したいのが、ジョブ型正社員を推進することによる「スキル・ジョブの標準化」である。

日本企業の総合職は、グルグルとローテーションで部署を回されるため、専門性があるようでないケースが多い。専門性を磨くためには、地理的な異動は必要ないし、自分のキャリアに責任をもち、家族を大事にしながら専門性を高めていくということは正しい方向である、と感じた。

雇用制度の是正は、個人の成長だけでなく、組織の成長にとっても、真剣に取り組むべき課題である。

出所:鶴光太郎「日本型雇用システムの未来と処方箋」HITO (2019.2) Vol.13, p.5-8.


教育訓練投資と生産性

2019年03月07日 | 組織・職場の学習
日本経済新聞の経済教室(2019年3月5日)によると、日本の労働生産性が低い理由は、労働時間の長さよりも「資源配分の効率性の悪さ」にあるようだ。

森川正之氏は次のように述べている。

「労働時間と生産性に関する内外の研究は様々で、労働時間を短くするほど生産性が高まるという単純な関係ではない

「各国の所得水準の差を要因分解した研究の多くは、資源配分の効率性の違いが国全体の生産性に強く影響することを示している。この観点からは、日本では「優良企業のシェア拡大、非効率企業の撤退」という新陳代謝のダイナミズムが弱いことが比較的重要な要因かもしれない」

興味深いのは、次のコメント。

「例えば企業の教育訓練投資は生産性への寄与が大きい

企業業績が好調なうちに、教育への投資をすることが生産性向上の鍵であるように感じた。


キャリア自律のための問い

2019年01月28日 | 組織・職場の学習
神戸大学の平野光俊先生によると、従業員の側から主体的にキャリアを構築する「キャリア自律」を実現するためには、次の3つの視点が重要になる。

①Self
②Meaning
③Life


すなわち、①自己概念や自己意識を確立し、②これまでの仕事を現在・将来のキャリアに意味づけ、③仕事だけでなくキャリアを人生全体の問題としてとらえるとき、主体的なキャリアを形成することができるという。

自分らしさ」という自己概念から考えると、以下の質問に答える必要があるだろう。

①自分らしさとは何か?
②自分らしい仕事をしているか?
③自分らしく生きているのか?


うーん、なかなか難しい問いである。

出所:『ビジネスインサイト』(Winter 2018) No. 104, p.5.


ステータスよりも自分らしく生きる

2019年01月07日 | 組織・職場の学習
リクルートワークス研究所のWorks Report2018『動き始めたフランスの働き方改革:テレワーク&リモートワーク』をパラパラめくっていたところ、次の箇所が目についた。

「デジタル世代はステータスよりも”自分らしく生きること”が大切。より柔軟でフラットな労働環境を提供できない企業は、それがやがて死活問題になる」(p. 17)

コンサルティング会社LBMGのCEOマチュー氏の言葉である。

これはフランスだけでなく、日本の若者にも当てはまることかもしれない。

僕の研究でも「自分らしさ」(Authenticity)が一つのキーワードになっているのだが、この概念は世代を超えて重要になってきそうだ。

自分らしい仕事を応援できる職場づくりが求められている。

3つのホウレンソウ

2018年12月29日 | 組織・職場の学習
先日、ある先生と話していて、ホウレンソウ(報告・連絡・相談)には3種類あることに気づいた。

第1のタイプは、受動型のホウレンソウ。
「ここまで出来ましたが、これからどうしたらいいでしょうか?

第2のタイプは、提案型のホウレンソウ。
「ここまで出来ました。これからこうしようと思うのですが、いかがでしょうか?」

第3のタイプは、指示型ホウレンソウ。
「ここまで出来ました。これからこうしようと思うのですが、~していただけないでしょうか?

指示型ホウレンソウは、上司を動かすマネジメントでもある。某有名メーカーのカリスマ社長を支える参謀的な副社長は、このタイプのホウレンソウをしながら社長を動かしていたようだ。

まずは受動型を卒業して、提案型に移行し、さらに指示型ホウレンソウができるようになれば、レベルの高いマネジャーになれるだろう。

上司からの敬意

2018年12月13日 | 組織・職場の学習
職場で最も大切なことを調査した研究によれば、「上司からの敬意」がトップであったという。

マーケット大学助教授であるクリスティ・ロジャーズは、上司からの敬意を、職場メンバー全員に払う敬意(owed respect)と、特別な働きをした個別メンバーに払う敬意(earned respect)の2タイプに分けており、これら2つのバランスをとることが重要になる、と主張している。

例えば、全体への敬意は高いが、個別への敬意が低いと、メンバーの働きが鈍るのに対し、全体への敬意が低く、個別への敬意が高いと過度な競争が生じるらしい。

メンバー全員の存在意義を認めつつ、よく働く人をしっかり評価することが良い職場づくりにつながるということだろう。

出所:クリスティ・ロジャーズ『互いの敬意が組織を成長させる:職場で実行できる7つの方法』ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー2019年1月号, p. 98-109.




「治る力」と「治す力」

2018年11月22日 | 組織・職場の学習
河合隼雄先生は『対話する生と死』(だいわ文庫)の中で、「自己治癒」について次のように述べている。

「心の病の場合は、どのような治療をするにしろ、根本にあるのは「自己治癒」ということだ、と筆者は考えている。つまり、治るとかよくなるとか言っても、結局それは患者自身の自ら治っていく力によるものなのである。しかし、そのような「自己治癒」の力を促進させるためには治療者の存在が必要となる。ただ、ここで重要なことは、治療者自身は本来的には「治す」人ではなく、患者自らの「治る」力に頼っているということである」(p.169)

同じことが「育てる」ことと「育つ」ことにも言えるような気がする。

育てるという行為は、本人が「育つ力」を引き出すことである、と思った。


本質をフィードバックしてくれる人

2017年08月25日 | 組織・職場の学習
一人でミッフィーを書き続けていたブルーナさんは「作品がひとりよがりなものになっていないだろうか?」と不安になることがあったらしい(p.21)。

そんなとき、どうしたのか?

まず、奥さんのイレーネさんの意見を聞いていたらしい。

作品が仕上がると、まっさきにイレーネに見せるのです。そのときは、彼女にスタジオにきてもらって意見を聞きます。これは、ぼくがデザイナーとして本のデザインをしていたころからのやり方です。彼女が作品に見入っているあいだ、どういう感想を語ってくれるのだろうかと、いつもヒヤヒヤしているんです。(中略)どれだけ描いても、慣れた仕事であっても、その出来ばえに謙虚になることは、創作活動に必要です。イレーネが「よくない」といった作品は、すべてしばらくお蔵入りです。そして、ある程度の時間をへてから、あらためてじっくりと見直し、手直しします。妻には専門的な知識はありません。でも読者としてのよい目をもっています。そのことが、ぼくの最高の幸福だと思っています」(p.21-22)

顧客の目で本質をフィードバックしてくれる人を持つ大切さを感じた。


出所:ディック・ブルーナ『ミッフィーからの贈り物:ブルーナさんがはじめて語る人生と作品のひみつ』講談社文庫

価値観と社員の幸せ

2017年08月16日 | 組織・職場の学習
アウトドアの総合メーカーである「スノーピーク」は、社員の幸せを追求する会社である。

その秘訣は次の5つ。

・価値観を共有できる人材を採用する
・企業文化を浸透させる
・社員同士の交流を促す
・ユーザーと交流する仕組みをつくる
・成果に報いる評価を行う

こうして見ると、価値観の共有に重点が置かれていることがわかる。

つまり、価値観を共有できる人を雇い、社員やユーザーとの交流を通して、組織の文化を浸透させ、その成果を適切に評価するというマネジメントだ。

「思い」の共有が人を幸せにする、と思った。

出所:ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー2017年9月号、p.48-60.