中国はなぜ海に浮かぶ原発を作ろうとするのか
海洋汚染などの環境的な問題点も指摘
中国が南シナ海の紛争地域の海に浮かべる海上原子力発電所の建設を推進し、物議を醸している。米軍当局者は、中国が実際に海上原発を作るには数年以上かかる見通しだとしながらも、実際に完成した場合、環境汚染と軍事安全保障の二つの側面で危険要因になるものだとして懸念を示した。
中国は南シナ海海域の軍事施設に電力を供給するために、海上に浮かべて発電する原子炉を2010年から研究・開発している。ワシントン・ポストが2日(現地時間)、米軍当局者の話を引用して報じた。退任を控えている米軍のジョン・アキリーノ・インド太平洋司令官はワシントン・ポストに「中国の海上原発の構想は、地域のすべての国にとって潜在的な影響を及ぼす」とし、「中国メディアは、中国政府がこれらの海上原発を利用し、南シナ海に対する軍事的統制を強化する意図だとはっきりと報じている」と述べた。このような懸念は米国務省でも共有されている。匿名の国務省当局者は「中国の海上原発の設置が近づくほど、彼らはより早くそれを米国の安全保障の利益のみならず地域の安定を害することに使うだろう」と述べた。
このような状況は、中国が台湾、日本、フィリピン近海を含む南シナ海でますます軍事力を誇示し、軍事的な緊張が高まるなかで起きている。最近、フィリピンの西側の海では、中国の海岸警備隊が、セカンド・トーマス礁付近のフィリピン軍派遣隊への補給を始めたフィリピンの艦艇を阻止するなど、直接の衝突を辞さずにいる。
中国も海上原発の軍事的な意味を隠さずにいる。中国の官営メディア「環球時報」は2016年、「政府が南シナ海に原子炉20基を設置し、商業的開発や石油探査、海水淡水化などを支援する計画」だと報じつつ、軍事利用の可能性に期待感を示した。環球時報は「海上原発が設置されれば、南シナ海の島と環礁は、本質的に原子力推進航空母艦となる」として、「これらは、遠くから来る米国の空母艦隊よりも軍事的にさらに有利だ」と報じた。
このような動きは、地政学的な対立要素とみなされるだけでなく、放射能汚染などの環境的側面から懸念する見方も相次いでいる。新米国安全保障センター(CNAS)のトーマス・シュガート研究員は「中国の海上原発の設置は、中国が南シナ海に建設した人工島に対する支配をよりいっそう強化するもの」だと指摘した。
さらに、海上の原発は、陸上の原発に比べ多種多様な事故の危険が高く、環境的にも強い台風や津波のような自然災害に脆弱であり、海中から敵対勢力がひそかに攻撃してきた場合、防ぐことが難しいという点などが問題として提起されている。陸上の原発の原子炉は、通常は150センチメートルを超える厚さの鉄筋コンクリートの構造物で保護されているが、海上の原子炉にこのような重い保護構造物を設置するのは難しいという短所もある。「憂慮する科学者同盟」(UCS)のエドウィン・ライマン氏は「海上原子炉は、陸上に作る原子炉のように頑丈で強固にすることはできない」として、「事故が起きた場合、海洋汚染がすぐに広範囲に広がることが避けられない」と述べた。
一方、一部の専門家らは過度な懸念だと述べた。戦略国際問題研究所(CSIS)のグレゴリー・ポーリング氏は「10年間いやというほど聞いたが、今もなお原子炉は造られていない」として、「海上に原発を作るという構想は、太陽光発電や風力発電、ディーゼル発電より現実性に劣る」と述べた。ポーリング氏は「中国が行うことには、実際以上に私たちの警戒心を呼び起こすものが多い」と付け加えた。
現時点で海上原発を運用する国はロシアだけだ。ロシアは2019年12月、アカデミック・ロモノソフという名称の海上原発を稼動させた。無動力のバージ船に複層構造の発電所を設置した構造で、加圧水型の軽水炉2基と蒸気タービン2機が組み込まれているという。