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中東和平、入国禁止令――「日米同盟第一」で言うべきことも言えない外交でいいのか

2017-02-20 | 日本と韓国・朝鮮・中国との友好

日米同盟・北朝鮮問題を問う

NHK日曜討論 志位委員長の発言

 

 

 日本共産党の志位和夫委員長は19日放送のNHK「日曜討論」に出演し、安倍晋三首相とトランプ米大統領との日米首脳会談の評価や北朝鮮の核・ミサイル開発問題などに対し、日本がどう対応するべきかについて各党と議論を交わしました。


日米首脳会談をどうみるか

異常な「貢ぎ物外交」――安保でも、経済でも、いっそうの従属へのレールが敷かれた

 司会の太田真嗣解説委員は、日米首脳会談の評価について聞きました。自民党の高村正彦副総裁が「とてもいい結果だった」と礼賛したのに対し、志位氏は次のように指摘しました。

 志位 異常な“トランプ追従”が際立った。安保でも、経済でも、いっそうの従属へのレールが敷かれた首脳会談だったと思います。

 安保をめぐっては、(日米)共同声明で、「日本は同盟におけるより大きな役割及び責任を果たす」と明記されました。これは、安保法制=戦争法にもとづいて、日米が地球的規模で軍事協力をやることを誓約したものにほかなりません。

 (日米共同声明で名護市)辺野古の新基地建設を「唯一の選択肢」と確認したことは、沖縄県民の総意を踏みつけにするものであって、私たちは絶対に認めるわけにはいきません。

 経済をめぐっては、安倍首相は共同会見で、「日本は大統領の成長戦略に貢献し、アメリカに新しい雇用を生み出す」と述べました。トランプ大統領の経済政策に一方的に「貢献」すると表明した。

 安保でも、経済でも、異常な「貢ぎ物外交」というのが実態だったと思っています。

トランプ政権とどう向き合うか

中東和平、入国禁止令――「日米同盟第一」で言うべきことも言えない外交でいいのか

 トランプ大統領が、中東・アフリカ7カ国市民などの入国を禁止する大統領令を出したこと、中東和平に関して「2国家共存」でなく「1国家による解決」もどちらもありうるとの考えを示したこと、駐イスラエル米大使館をテルアビブからエルサレムに移転する考えを示していることなどをめぐって、トランプ政権にどう向き合うかが議論となりました。志位氏はつぎのように発言しました。

 志位 まず、イスラエルとパレスチナの問題は、国際的な合意で「二つの国家の共存」ということが決められてきたわけです。それを「一つの国家(による解決)もありうる」ということになりますと、(国際合意が)根底から覆ることになります。

 (駐イスラエル米国)大使館をテルアビブから(イスラエルの首都とは国際的に承認されてない)エルサレムに移すということもいま言われていますが、こういうことをやると、これは本当に新たな戦争の危険ということも起こってくると思います。

 私は、トランプ政権が「アメリカ第一」だと言い、それに対して安倍首相が「日米同盟第一」と(言う)。これは“最悪の組み合わせ”だと思います。これでは、際限のない従属の道を進むことになるし、今議論されているようなさまざまな内外の諸問題にも対応できなくなります。

 たとえば、日米首脳会談それ自体が、例の(トランプ大統領による7カ国市民などに対する)入国禁止令が出た最中に行われました。国際社会からあれだけ厳しい批判が寄せられているのに、(安倍首相は)「内政問題だからコメントしない」といって、事実上容認しました。しかし、これは「内政問題」ではありません。人権問題というのは国際問題だというのは、アメリカ自身が言ってきたことです。

 「日米同盟第一」でアメリカに言うべきことも言えない――そういう外交でいいのかが問われています。私たちは、対等・平等・友好の日米関係に切り替えるべきだと考えています。

 志位氏のこの発言をめぐって、高村氏との間で次のようなやりとりになりました。

 高村 あの時点では、トランプ氏の大統領令が裁判所によって効力を取り消されていると。大統領令が取り消されて、傷ついている人に、塩をすり込むようなことを言う必要はない。表で声高にいうことが友人としてのアドバイスではなくて、どうやって良い政策をやっていただけるかということについては、われわれは十分アドバイスしていきます。

 志位 (「表で声高に」というがトランプ氏への批判は)一切言わなかったじゃないですか。「傷ついている人」と言いますが、トランプ大統領は、裁判所の決定が間違っていると言い放っている。

 高村 裁判所の決定で、動いているときなんですよね。

 志位 (判決が出ても)トランプ大統領の姿勢は変わっていないですよ。

「日米同盟」がどうなるか

米国の「対テロ戦争」に自衛隊が参加する危険――安保法制=戦争法廃止は急務

 日米共同声明に、「日米の役割、任務、能力の見直し」を行い、「日米同盟を更に強化する」と述べていることについて議論になりました。高村氏が「安全保障環境が厳しくなっている。それに対応する抑止力、対応力を高めていく」と軍事力強化を狙う考えを表明。志位氏は次のように発言しました。

 志位 私は、日米共同声明を踏まえて、トランプ政権が、日本に対して、より大きな軍事的役割を求めてくる可能性があると思います。

 たとえば、トランプ大統領は、過激組織IS掃討作戦の策定をマティス国防長官に指示する大統領令を出しました(1月28日)。それを踏まえて、米国防総省はシリアに(IS掃討作戦のために)地上戦闘部隊を派遣することを検討していると報道されています(2月15日、米CNN)。

 トランプ政権が大規模な地上戦闘部隊の派兵を決めた場合、私は、日本の自衛隊に兵たん支援の要請をしてくる可能性があると思います。そのときに「ノー」と言えるか。私は、国会でだいぶ議論しましたが、政府は、「対IS軍事作戦への自衛隊の後方支援は、安保法制で法制上はできる」と答弁しました。

 ですから、アメリカの要請に応えて、「対テロ戦争」に自衛隊が参加する危険があると思います。私は、そういう方向にいってはならないと思います。安保法制=戦争法を廃止することは、この点でも急務だと強調したいと思います。

 志位氏のこの発言をめぐっても、高村氏との間で次のようなやりとりになりました。

 高村 (対IS軍事作戦への)後方支援については、法制上はできる場合があると。ただし安倍内閣ではやらないということもいっていますよね。

 志位 それは「政策判断」としてはやらないということですけれども、総理は、その根拠をお示しにならなかった。ですから、「政策判断」はいつでも変わるんです。(米国に)要求されたら、やる可能性はあるんです。

 高村 (「政策判断」が)未来永劫(えいごう)、絶対に変わらないとはいいませんがね、安倍総理があそこまではっきりいっているのだから、安心してみていてください。

 志位 それ(安倍首相の「政策判断」)はトランプ政権の前の話ですよ。

北朝鮮問題にどう対応するか

従来の方針(「戦略的忍耐」)を転換し、外交交渉のなかで非核化を迫ることが重要

 つぎに、北朝鮮による核・ミサイル開発にどう対応するかが議論になりました。高村氏は、ミサイル発射基地を攻撃する「敵基地攻撃」について「(敵基地攻撃能力を保有する)具体的な検討を開始するかどうかという検討はしていっていい」とのべました。志位氏はつぎのような提唱を行いました。

 志位 いかにして北朝鮮の核・ミサイル開発を止めるか。

 この点で、私は、安倍首相が日米首脳会談を受けての国会答弁で、「(米国が)トランプ政権に代わり、オバマ政権時代の戦略的忍耐から、政策の変更について今議論している最中だ」(衆議院予算委員会、2月14日)とのべたことに注目しています。

 これは、「戦略的忍耐」といわれる、北朝鮮が非核化の意思を示さなければ交渉に応じないという従来の方針の破たんを認めるものだと思います。

 問題は、「政策の変更」の方向だと思います。

 一部に、先制攻撃などの軍事的選択肢が言われていますが、これは絶対にとるべきではないことだと思います。

 私たちは、米国が、北朝鮮に対して、経済制裁の厳格な実施・強化をはかりながら、従来の「戦略的忍耐」の方針を転換して、北朝鮮との外交交渉のなかで非核化を迫るという方針をとるべきだと考えています。

 こういう方向に向かうように、日本政府は働きかけるべきだと思います。

先制攻撃の選択肢は絶対にとってはならない

――経済制裁の圧力と一体に、外交交渉のなかで非核化を迫れ

 司会の太田氏が「北朝鮮の抑え込みのためには、たとえば韓国だとか中国との関係が非常に大事になってくる。この点も含めてどうか」と質問したのに対し、志位氏は次のように答えました。

 志位 経済制裁の厳格な実施は、中国も含めてこれは必要ですし、強化も必要だと思います。

 ただ、8年間、オバマ政権のもとで(北朝鮮の核・ミサイル問題が)解決しなかった。この事実があるのですね。先ほどいった「戦略的忍耐」という、北(朝鮮)が非核化の意思を示さなければ交渉に応じないということをやっている間に、北(朝鮮)はどんどん(核・ミサイル)開発を進めてしまったわけです。

 (トランプ政権のもとで)これ(「戦略的忍耐」)の見直しがいま始まっているわけです。見直しのさいに、“すべての選択肢をテーブルの上に乗せている”とアメリカの当局者(マティス米国防長官)は言っています。この中には、軍事(力行使)のオプション(選択肢)もあれば、外交(的解決)のオプションもあると思いますが、私たちは、軍事のオプション――先制攻撃のオプションは絶対にとってはならないと思います。

 そうすると外交(的解決)しかないわけです。私は、(米国が)これまでの方針を転換して、(北朝鮮との)外交交渉のなかで非核化を迫る。経済制裁の圧力と一体になって、核兵器の開発、ミサイル開発の手を縛り、放棄に向かわせる。この方向で、いま国際社会が新しい方向に進む必要があるし、日本はそういう方向で働きかけるべきだと重ねて言いたいと思います。

新たな日米「経済対話」をどう見るか

これまで以上に乱暴な内政干渉の「枠組み」になる危険――国民的監視が必要

 最後に、日米の経済交渉がテーマとなりました。日米首脳会談で合意した、新たな「経済対話」、「日米2国間協議」について議論が行われ、志位氏は次のように述べました。

 志位 新たな「経済対話」の「枠組み」といいますけれど、これまでの日米経済対話の「枠組み」がどういうものだったか。

 1990年の「日米構造協議」、94年に始まる「年次改革要望書」などの「枠組み」は、結局、日本に対して、大規模な公共投資、大型店舗の規制緩和、労働法制の規制緩和、そして農産物の輸入自由化、これらを押しつける内政干渉の「枠組み」だったというのが歴史の事実であるわけです。

 今度、「アメリカ第一」を掲げるトランプ大統領と、そのトランプ大統領の政策への「貢献」を約束している安倍首相との間で「経済対話」が始まっていくということになりますと、これまで以上の乱暴な内政干渉が行われる危険があると思います。

 トランプ大統領は、たとえば、自動車(貿易)問題一つとっても、日本の関税はゼロなのに、「不公正」だといって非難しています。ですから、この動きに対しては、私は、国民的な監視が必要だということを強く言いたいと思います。

「日米2国間協議」にどう対応するか

日米FTA交渉に断固反対――相互の経済主権を尊重した対等・平等の貿易と投資のルールを

 さらに議論は、環太平洋連携協定(TPP)と、日米2国間協議について進みました。自民・高村氏は、米国の「永久離脱」で発効が絶望的なTPPについて「(米国が)復帰を今すぐできるはずがない」と述べた上で、「2国間になるのかも含めて十分話してもらいたい」と表明しました。

 民進・江田憲司代表代行は「歴史を振り返ればトランプ政権でなくても理不尽なことを言ってきた」「2国間(協議)は力の差が出る」と懸念を示しました。志位氏は「2国間協議」の危険性を次のように指摘しました。

 志位 すでにTPP協定でどこまでいったかということなのですが、たとえば、農産物の重要5項目について、3割の品目では関税が撤廃、残る7割でも関税率の引き下げなど、「無傷な品目は一つもない」という状況です。

 「2国間協議」ということになりましたら、TPPで譲歩した線がスタートラインになって、関税(撤廃の問題)でも「非関税障壁」(撤廃)の問題でも、いっそうの、TPPを超える譲歩が迫られることは、私は必至だと思います。

 現にいま、アメリカで起こっていることは、牛肉、豚肉、コメなどの生産者団体が、(日米)FTA(自由貿易協定)交渉をやれとトランプ政権に迫る。そういう動きに対して、日本農業新聞は、「日米FTAとなれば、TPPを超える輸入自由化となることは避けられない」と警鐘を鳴らしています。

 私は、日米FTA交渉に進むということは断固反対です。相互の経済主権を尊重した対等・平等の貿易と投資のルールをつくるべきだと思います。

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映画は過去と現在の“女性の連帯”に光を当て、彼女たちの人生を刺激的に照らすことはしない。

2017-02-20 | 日本と韓国・朝鮮・中国との友好

映画『私を忘れないで』3月慰安婦素材映画2編封切り

登録 : 2017.02.19 23:45 修正 : 2017.02.20 07:13

キム・ヒャンギ、キム・セロン主演 
劇映画『雪道』三一節に封切り 
韓・中・フィリピンの被害者の6年を扱う 
ドキュメンタリー『The Apology』は 
3月16日封切り 
英国映画『アイヒマン・ショー』 
収益金は慰安婦被害者に寄付

『雪道』でキム・ヒャンギ(左)とキム・セロンが15歳の若さで慰安婦として連れて行かれる少女として出演=アットナインフィルム提供//ハンギョレ新聞社

 3月、日本軍慰安婦を素材として劇映画とドキュメンタリーが観客を迎える。劇映画『雪道』が3月1日、ドキュメンタリー映画『The Apology(謝罪)』が3月16日に封切られる。『雪道』と同じく三一節(1919年3月1日の三一独立運動を記念する日)に封切られる英国の劇映画『アイヒマン・ショー』は、収益金を慰安婦被害者に寄付する予定だ。

 

 『雪道』は少女の友情を女性の視線で追っていく。ある村に住むジョンブン(キム・ヒャンギ)とヨンヘ(キム・セロン)は、家庭環境も性格も違う同年齢の少女だ。貧しい家で育ったジョンブンはハングルも読めないが、ヨンエの兄のヨンジュがくれた本『小公女』を大事に持っている。ヨンエは独立軍の父を恨み“天皇陛下”に忠誠をつくす。母親が真鍮の器を売りに市場に行った間に、ジョンブンは日本軍に拉致され、ジョンブンが乗った列車に向かって「日本に行く」と大声を上げたヨンエも捕らえられて来る。日帝強制占領期間(日本の植民統治時期)の話と並行させて“ヨンエ”として生きているジョンブン(キム・ヨンオク)の現在の人生があらわれる。現在のジョンブンと同じ建物に住んでいる不良少女ウンス(チョ・スヒャン)は危機の瞬間にジョンブンに助けを求める。

 

 映画は過去と現在の“女性の連帯”に光を当て、彼女たちの人生を刺激的に照らすことはしない。イ・ナジョン監督は「おぞましい暴力の瞬間を“映画的スペクタクル”として利用しないように注意した」と13日の映画試写会後に開いた記者懇談会で明らかにした。最初に企画案を出した作家のリュ・ボラ氏は「その時代の少女の夢に集中しようとした」と話した。映画はイ・ヒョリの歌「私を忘れないで」で予告篇ミュージックビデオを製作した。2015年の三一節特集2部作で放映された韓国放送(KBS)のドラマを映画バージョンにアップグレードし、2015年全州(チョンジュ)映画祭と昨年のソウル国際女性映画祭にも出品された。イ・ナジョン監督はドラマ『優しい男』などを演出した。

 

『The Apology』で韓国のキル・ウォンオクさんが水曜集会に参加した場面=グラム提供//ハンギョレ新聞社

 『The Apology』は慰安婦被害者の国際的な連帯に集中する。中国系カナダ女性監督ティファニー・ション氏は、中国、フィリピン、韓国の被害者を6年間にわたりカメラに収めた。各国の状況はそれぞれ違う。韓国では積極的な活動家キル・ウォンオクさんと共に20年間続いている水曜集会が1千回をむかえる場面などを見せる。フィリピンでは2010年代にアデラさんなどが自身の被害を証言し始めた。中国のチャオさんはカメラの前で自身の記憶を蘇らせる場面だ。隠された秘密を打ち明けると娘は衝撃を受けて泣く。慰安婦被害者の問題を扱ってほしいという各国の請願が国連人権会議へ向かう場面で、連帯は絶頂に達する。

 

 『アイヒマン・ショー』(ポール・アンドリュー・ウィリアムズ監督)は、1961年4月11日ナチのユダヤ人虐殺の主犯アドルフ・アイヒマンがイスラエルの法廷に出頭する“世紀の裁判”を全世界に初めて生中継した製作スタッフの話を扱った英国映画だ。多国籍の製作スタッフは、生放送中継のためにエルサレムに到着し、イスラエル当局の厳しい要求に合わせるために奮闘する。映画は裁判の生中継画面を同時に配置した。「起訴手続き上、私は無罪です」と言うアイヒマンの厚かましい姿は最近の韓国の状況を想起させる。

 

映画『アイヒマン・ショー』の予告編より。1961年生中継された画面を同時に見せている=ディスティション提供//ハンギョレ新聞社

 『雪道』は最後の字幕で「2017年1月1日現在、慰安婦被害者として登録した239人のうち199人は亡くなり、40人だけが生存している」と話す。『The Apology』のアデラさんは撮影期間中に亡くなった。

 

ク・ドゥルレ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

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