「マーサの幸せレシピ」(ドイツ映画)の原題は、「Bella! Martha」(きれいなマータ)。原題が人名なのに邦題が全然違うものになるのはよくある。「東ベルリンから来た女」も原題は「バーバラ」。「フーゴの不思議な発見」は「フーゴ」(フランスが舞台だからユーゴか)。で、「マーサ……」の話に戻って、なんで「マーサ」(英語読み)なんだ。ドイツ映画でハンブルクが舞台なんだから、せめて「マルタ」とか(マールタ、マルタ……って言うアリアがある。)。「きれいな」がイタリア語の「Bella!」なのは、イタリアが物語の重要な要素だから。マータの姪っ子のお父さんはイタリア人(ヴェルディと同じジュゼッペ)。何よりも、マータとひっつくのが(恋に落ちたのが)、イタリア人のマリオ。マリオがマータんちに料理を作りに来て帰るとき、マリオの「Buona Notte!」に対して、マータは「Gute Nacht!」。そう簡単にはイタリア男に屈しないからね、という意地が感じられます。ぶちゅっとしそうでしません(どきどきする)。ちなみに、私が人生で最初に聞いた「Buona Notte!」は、「リゴレット」に出てくる殺し屋のスパラフチレがリゴレットとの別れ際に歌う「ぶぉーなのーーっ(オクターブ下がって)てーーーー」。殺し屋だけど、挨拶はちゃんとします。