暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

暁の茶事  in  2022 ・・・(その2) 曉雪

2022年02月10日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

      (午前5時過ぎはまだ真っ暗です)

つづき)

お席入りの茶室は八畳の広間。なるべく暗さを感じてほしく、座敷行灯と床の手燭だけとしました。

お客さまお一人お一人とご挨拶を交わしました。

お正客IさまはS先生の同門社中です。1年お待たせした暁の茶事を楽しみに待ち望んでくださって、こちらも今回お招きできたことが涙が出るくらい嬉しゅうございました。

その日は、Iさまと初めてお会いした時の思い出の着物、黒地に白鳥の模様のある付け下げを着ました・・・。

次客Iさま、三客Aさま、詰M氏は暁庵の社中です。一生に一度できるかどうかの暁の茶事、社中の方に体験し、楽しんで頂けたら・・・と思いました。何かとお手伝いをお願いするかもしれませんが、先ずはゆったりくつろいでくださると嬉しいです。

 

 

本席の床は「曉雪満群山」。坐忘斎お家元の御筆です。

昨年4月に教授拝受のため今日庵を訪れた折に、坐忘斎お家元にお願いしていた御軸で、昨年のクリスマス・イヴに我が家に到着しました。

1月8日の初釜に次いで2回目の使用ですが、実は「暁の茶事」のために・・・と、お家元が心を込めて書いてくださったものです。

暁、雪を冠した山々が連なり、暗い山の端が徐々に茜色に染まっていきます。日が昇り、雪山の頂を明るく照らし、その暁光は群れている山々を普く照らし、どの山も見事に輝きはじめました。

・・・壮大な暁の景が目の前に浮かんでくるようです。

「前茶を差し上げます」

点前座に旅箪笥を置き、茶碗4個(絵高麗写しの数茶碗)、木地棗、柄杓、蓋置(赤楽、つくね)を中に用意し、建水を運び出しました。

茶碗をしっかり温めながら各服点で薄茶をお出ししました。行灯と手燭の灯だけなので、泡が細かく点っているか自信がありません。それでも、お客さまは「美味しくあたたかいです・・・」と優しいです。行灯と手燭のほの暗い闇が皆を包み込んで、時が経つのを忘れてしまいそう・・・いつまでもゆるゆるとお話していたいところですが、初炭をしました。

「お炭を置かせて頂きます」

炭斗はミャンマー籠。内側の朱塗が根来塗を連想し、ミャンマーの人が編んだという籠は民芸の持つ力強さがあります。昨年12月に東京美術倶楽部で購入し、今回が初使いです。

釜を上げ初掃きをすると、お客さまが炉辺に寄ってきて炉中や炭の様子を仲良くご覧になります。ほの暗い中に前夜から熾していた残り炭がキラキラと輝いて・・・。

 

      

巴半田を持ち出して炉中の炭を上げます。炉中を整えてから下火を大小3つほど選んで入れました。

灰器を持ちだし、炭斗を戻し、いつものように湿し灰を撒きました。灰器は京都壬生寺の焙烙です。壬生寺では年に数回、壬生狂言(正しくは壬生大念仏狂言)「節分」が上演されます。「節分」では、願い事が書かれた焙烙を次々と落として割る、厄払いの「焙烙割り」が行われ、それはそれは痛快な一瞬です。・・・そんなことを懐かしく思い出しながら、焙烙を使いました。

胴炭から順に炭を置き、香合を拝見にお出ししました。

釜を炉縁近くまで引き、カンを置いて、灰器を水屋へ下げます。本来なら水屋から薬缶を持ち出し、水を入れ、釜を濡れ茶巾で清めるところですが、「暁の茶事」では釜を水屋へ下げます。

釜に水を足して溢れさせ、濡れ釜にして、釜肌から蒸気が上がっている状態で釜を持ち出します。濡れ釜と釜肌から上る蒸気が何よりのご馳走と考え、亭主はいろいろ工夫を凝らします。

五徳に釜が乗せられ、蓋を切って、炭斗を引き、襖を閉めると、香合の拝見が始まりました。

染付の梅香合は銘「一輪」です。江戸前期の俳人・服部嵐雪の俳句「梅一輪 一輪ほどの あたたかさ」から名付けました。香は「花暦」(京都・薫玉堂)です。

こうして初炭が終わりました。

 

(10日は雪になりました。雪の中、来てくれたのに蜜柑が無くってごめんね!9日撮影)    

 

次に懐石ですが、もう時間との戦いでいろいろハプニングがあり、思うように進みませんで、大変お待たせしてしまいました。「あたたかく」「美味しく」「少な目」がテーマでしたが、いずれも難しいです・・・。

奮戦の様子はご想像いただいて、献立を記します(もちろん、写真を撮る余裕などありません・・・

① 折敷に、飯椀(おかゆ)、汁椀(シジミ味噌汁 八丁味噌仕立て)、長皿にいろいろ(里芋の煮物、鳥の丸、ヨモギ麩に白味噌添え、紅白かまぼこ、黒豆の松葉刺し)、小皿に季節の野菜の和え物をのせ、おだししました。

② 漬物(沢庵、野沢菜漬、梅干し、塩昆布)

③ ふろふき大根、鳥赤味噌 

④ 土瓶蒸し(しめじ、海老、花麩、銀杏、菜の花、柚子、カボス)   

懐石は以上ですが、お客さま、いかがでしたでしょうか??

折敷や長盆を何度も運んで座るのは膝に負担がかかるので、詰M氏にお運びを手伝っていただき、とても助かりました。(汗・・・) (つづく)

 

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暁の茶事 in 2022 ・・・(その1) 焦りと覚悟と

2022年02月08日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

     (本席の行灯・・・今回はスズメ瓦は使わず蝋燭を灯しました)

 

2月5日(土)の早朝、暁の茶事をしました。

昨年はコロナウイルスの緊急事態宣言のため中止しましたが、今年はいざ決行!です。

・・・それは、暁の茶事を行うための残された時間が少ないことへの焦りもあり、もしかしたら最後の暁の茶事になる可能性も・・・と覚悟しながら、次のようなご案内のお手紙を差し上げました。

  「暁」は 「明時」あかときの転じた言葉で

  夜半から夜の明ける頃までを言うそうです

  そんな「暁」に この世に生をうけた私は

  縁あって茶の湯の世界へ導かれ 特に茶事に心惹かれて歩んで参りました

  そして漠然と 最後は暁の茶事で幕を引けたら・・・と。

 

  数年前から残された時間がないことにやっと気が付き 暁の茶事をはじめました

  今回で2回目ですが 試行錯誤を楽しんでいます

  暗闇と寒さ 障子の彩り 灯りのゆらめき 炭火のかがやきなど・・・

  刻々とすべてが移り変わる中で 

  心を込めて御茶一服差し上げたく 謹んでご案内申し上げます

  万事いたらないことでございますが 御来庵をお待ち申しております   かしこ

     令和四年睦月吉日            暁庵

 

2022年(令和4年)2月5日(土)4時45分に待合集合、5時席入りです。

お客さまは4名さま、お正客Iさまは東京、次客Iさまは横浜市内、三客Aさまは藤沢市、詰M氏は川崎市から車やタクシーで馳せ参じてくださいました。

なるべく水屋も暗くしてお待ちしていると、板木が1つ打たれました。お客さまがいらしたようです。

玄関の小上りでアルコール消毒をし、板木を1つ打ってお入りくださいと予めお願いしてありました。

 

 

待合の掛物は「灑雪庵」(さいせつあん)(泉奏書)。

隙間から雪が降りそそぐような京都の古家を「灑雪庵」と名付け、この書を額に入れ玄関の土間に掲げていました。京都の2月は一段と冷え込みますが、その寒さを愛でてよく茶事をしました。横浜へ戻ってからこの書を表装し、久しぶりに「暁の茶事」で掛けてみました。

板木が4つ打たれ、お客さまが全員到着したようです。市販の甘酒に少し砂糖を加えて甘みを調節し、絞り生姜を垂らしてお出ししました。汲出しは志野焼(青木念作)です。

「甘酒をお飲みになりましたら、腰掛待合へお出ましください。寒いのでショールなどの防寒具をどうぞ・・・」と自分でご案内しました(一人亭主なので・・・)。

腰掛待合には輪胴4つを入れた大火鉢を用意しました。普段は無用の長物ですが、夜咄の茶事や暁の茶事では「この時を待ってました!」とばかり大活躍で嬉しいです。

ベランダの腰掛待合には足元行灯が1つ、露地には足元行灯3個を配置し、蹲近くの織部灯篭にも灯が入りました。腰掛待合は少し暗めですが、ここにお正客さまの手燭が加わります。

 

 

湯桶を湯桶石に置き、手燭と手桶を持って蹲に向かいます。湯桶の温度を手桶の水で調節し、それから蹲の水で辺りを清め、心身を清め、手桶の水を一気に蹲に流し込みました。

いよいよ迎え付けの手燭交換です。

厳寒の真っ暗な中、枝折戸を開け、手燭の灯に照らされてお正客I様と顔を合わせ、清々しく厳粛な気持ちで手燭交換をし、無言で礼を交わします。

今まで手燭交換の意味など考えたこともなったのですが、もしかしたら「茶事の間、お互い何か大事なものをあなたにお預けします・・・」ということかもしれません? 大事なものとは、う~~ん? (つづく)

 

    暁の茶事  in  2022 ・・・(その2)へつづく   (その3)へ

 

 


茶事準備中・・・暁の茶事

2022年02月02日 | お茶と私

     (雪の日に・・・2022年1月6日撮影)

 

明日は節分、あさっては立春、厳しい寒さが続いていますが、

春が駆け足でやってくるのを感じます

暁の茶事まであと4日となりました。

寒稽古中に日の出が早くなったのを実感しつつ、今朝で寒稽古は終了です。

ここ1週間の観察で茶室が明るくなる時間が予想より遅かったので、待合集合を15分遅らせようかしら? と思案中です。

 

     (残念ながら障子の墨絵が見れるのは10時~13時です)

 

あとは行灯や燭台などの灯火道具の確認、それから・・・苦手な掃除と懐石準備にかからなくてはなりません。

灯火道具を出してみました。

座敷行灯1個、足元行灯4個、手燭2個、膳燭1個、小灯し4個、それから水屋用の行灯(電気)1個・・・全部で12個になりました。それに庭の灯篭を入れると13個になりました。

凄い数ですが、このくらいは使いたいの!  

慣れているとはいえ一人亭主なので、効率的に考えて準備しないと間に合わなくなりそう・・・

一番頭が痛いのが懐石です。

朝早い時間の食事なので量は少なめ(つい、多くなりそうで要注意!です)、美味しく温かく消化の良いものをお出ししたいと思っています。

何度も運び出し、特に座ったり立ったりするのは膝に応えるので、折敷に点心風に盛り付けて省エネを考えています。

はてさて、最終的にどのような懐石になるのやら?? 

今日のうちに懐石で使う器類を出して確認し、洗っておきましょう。

 

 (散歩道にて・・・孤高の一本、はて?何の木だったかしら?)

 

掃除は苦手なのですが、庭の掃除は先週の暖かな日を選んで済ませました。それでも前日には落葉を掃除したり、ベランダや蹲を洗ったりしなくてはなりません。

気になっているガラス戸も拭く予定ですが・・・頭の中ではすっかり済んでいる事でも実際は寒さに負けて思うようにはかどっていません。頑張らねば・・・頑張るぞ!

お点前だけなら本当に楽ちんなのだけれど・・・と思いながら準備に勤しんでいます。